悲報…望み打ち砕く 石原紅葉さん、「子ども議員」はきはき質問 久保夏海さん、読書家で何事も一生懸命

座間9遺体
座間9遺体被害者の居住地

 神奈川県座間市のアパートの一室から9人の切断遺体が見つかった事件で、9人全員の身元が判明した。夢を抱き、悩みも抱えていた3人の女子高生を含む15~26歳の9人の人生は、「首吊(つ)り士」を名乗る白石隆浩容疑者(27)によって奪われてしまったのか。身元発表から一夜明けた10日、望みを絶たれた関係者は肩を落とした。

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 群馬・邑楽町 高1 石原紅葉さん(15) 「子ども議員」はきはき質問

 「無事の帰宅を願ってきたが、こうした結果となってしまい、言葉もありません」。県立高1年、石原紅葉(くれは)さん(15)が通う高校の校長はこう声を絞り出した。遠方まで出向いて自作のチラシを配り、一人娘の行方を捜してきた家族の希望を打ち砕く、あまりにも非情な結末だった。

 「おとなしく、勉強ができて真面目」。そう周囲が声をそろえるように、充実した学生生活を送っていた。中学3年だった昨年7月、邑楽(おうら)町が開催した「一日子ども議会」に「子ども議員」の一人として参加。当時の校長(58)は「人口減少問題について、はきはきと質問していた」と振り返る。

 「積極的じゃない自分に自信をつけたい」。そんな理由で入部した演劇部では他校との合同公演の舞台にも立ち、稽古の成果を披露した。絵のうまさも評判で、高校では美術科に進み、美術部に所属。ゲームやアニメも好きだったという。

 群馬県警などによると、異変は高校の始業式当日の8月28日に起きた。午前中に制服を着て自宅を出た石原さんは、自分で学校に欠席の連絡を入れ、そのまま姿を消した。夕方以降、母親が電話してもつながらず、無料通信アプリ「LINE(ライン)」で、相手がメッセージを読んだことを示す「既読」の表示もつかなくなった。

 県警は両親の届け出を受けて29日から捜査を開始。防犯カメラ映像から、石原さんが28日、1人で自宅の最寄り駅から電車に乗り、小田急江ノ島線片瀬江ノ島駅(神奈川県藤沢市)に向かっていたことが確認された。私服姿で、自宅には通学用の自転車が残されていた。

 県警は「首都圏にいる可能性がある」とみて、東京都内で1560部、神奈川県内で700部のポスターを掲示して行方を捜していた。

 学校関係者らによると、家族は消息が途絶えた同駅周辺まで出向いて自作のチラシを配ってきたという。

 身元特定が公表された前日の11月9日、石原さんは16回目の誕生日を迎えるはずだった。同級生の女子生徒(15)は「すごく優しく、人のことを傷つけたりもしない子だった。信じられない。残酷すぎる」と目を伏せた。

 さいたま市 高2 久保夏海さん(17) 読書家、何事も一生懸命

 「誠に無念。元気に戻ってくると信じていた」。身元判明から一夜明け、埼玉県立高校2年の久保夏海さん(17)が通っていた高校では教頭が取材に応じ、「ご遺族のことを考えると深い悲しみでいっぱい」と言葉を詰まらせた。

 久保さんは中学では合唱部の活動に熱心に取り組み、高校でも入学当初は音楽部に入っていた。その後は、「漫画・アニメ同好会」に所属。「非常に真面目でおとなしく、読書家だった。欠席はほとんどなかった」(教頭)という。

 中高を通じ、「真面目で穏やか。何事も一生懸命やる」と評される存在で、今年2月からはラーメン店でのアルバイトにも精を出していた。

 捜査関係者によると、9月30日午前、母親に「お昼ご飯を買いに行く」と言って外出。様子は普段通りだったが、家族がいつまで待っても戻ってくることはなかった。10月1日夜、母親が110番通報し、県警大宮署に行方不明者届を出した。県警の捜査では、9月30日午後、白石容疑者の自宅がある神奈川県座間市で足取りが途絶えていた。

 高校は10日朝、学年集会を開いて生徒に久保さんの身元が分かったと伝え、黙祷(もくとう)したという。教頭は「悔しさと、(容疑者への)怒り、憎しみがある。一つの言葉では表せない」と話した。

 「どんな刑でも命戻らず」 同級生・同僚ら怒り

 「まだ信じられない」「何か声をかけられなかったのか」。新たに身元が判明した被害者の遺族らは、やり場のない怒りや悲しみに感情を大きく揺さぶられている。

 「身元特定の連絡が来たが、まだ信じる気にはなれない。何も考えられない」。こう言葉を絞り出したのは、福島市の県立高3年の須田あかりさん(17)の父、博文さん(62)だ。

 国際交流行事で米国の大学生に親身になって書道を教えていた須田さんは、進学して公務員になることを考えていたという。高校の校長は「さぞ無念であったと感じる」と話した。

 アニメや読書好きだった埼玉県所沢市の実践女子大2年、更科(さらしな)日菜子さん(19)と小・中学校で同級生だった男性会社員(20)は「成人式で会えると思っていたのに」と話し、「どんな刑を受けても9人の命は戻らない」と怒りを込めた。

 家族思いで、夕食の食材を買って帰る姿が目撃されていた神奈川県厚木市の会社員、三浦瑞季さん(21)と中学で同級生だった女性会社員(22)は「物静かな女の子。こんな事件に巻き込まれるなんて信じられない」と声を詰まらせ、別の同級生の女性は「あんな普通の子だったのに何があったのか」と肩を落とした。

 横浜市のアルバイト、丸山一美さん(25)は内気な性格だったが、4月から市内のコンビニエンスストアでアルバイトを始めた直後の悲劇だった。

 コンビニの運営会社は「非常に真面目でよく仕事をしてもらった」とし、「仕事仲間としてお悔やみを申し上げたい」とコメントした。

 介護施設に勤める傍ら、ロックバンドのベーシストとして活動していた神奈川県横須賀市の介護職、西中匠吾(しょうご)さん(20)。

 通っていたライブハウスを経営する男性は「今でも頭が混乱している。なんで事件に巻き込まれたのか…」と言葉を失った。「率先して店の片付けをするいいやつだった。絶対に許さない」

 埼玉県春日部市の接客業、藤間仁美さん(26)は周囲に「ツイッターで知り合った人に会いに行く」と言い残し、失踪。同僚男性(74)は「笑顔が少なく悩んでいた様子もあった。何か声をかけてやれなかったのかと自責の念にかられる」と悔やんだ。