柔道整復師制度 ゆがみを矯正 不正防止へカルテ提示要求、倫理単位必修に

 

 一部の整骨院や接骨院で不透明な保険請求が相次いだ柔道整復師について、厚生労働省が来年度から、不正請求の疑いがある場合にはカルテの提示を求めるなど審査を厳格化することが9日、分かった。反社会勢力と結託した療養費の不正受給事件も明るみに出たことから、柔整師の養成課程に職業倫理を学ばせる新しいカリキュラムも導入。柔整師の抜本的な規制強化は初めてとなる。

 整骨院や接骨院などでは、国家資格が必要な柔整師が施術する。医療行為は行えないが、施術には健康保険が適用され、保険から療養費が支払われる。費用は原則、患者がいったん全額を支払い、自己負担分を除いた分を保険者に返還要求する仕組みだ。

 だが、整骨院などの施術所については、患者が自己負担分だけを支払い、残りの費用を施術所が患者に代わって保険者に請求する「受領委任」も特例で認められている。これが水増しや架空請求の温床になってきた。

 厚労省によると、保険請求が認められるのは、骨折、脱臼、打撲、捻挫、肉離れ-のけがのみ。単なる肩こりや慢性的な腰痛などは保険適用対象外だが、捻挫などに偽装して保険請求するケースがある。患者に初診時、白紙の療養費支給申請書に署名させる施術所が少なくないという。

 平成27年11月には、接骨院で患者に施術したように装い、暴力団組員などが療養費を詐取する事件が摘発された。この事件の被害額は約1億円と推定。厚労省によると、26年度までの5年間で、不正請求で返納された療養費は約5億7千万円に上るという。

 厚労省は一連の事件を教訓に、不正請求の疑いの強い施術所にカルテや領収書の発行履歴など資料の提示を求め、「柔道整復療養費審査委員会」が確認した上で、審査を厳格化する。請求者に説明を求めることもある。支給申請書の様式を統一化し、地方厚生局による個別指導や監督も迅速化するという。老人ホームから金品で患者の紹介を受けた施術所には療養費の支給を停止する。

 一方で、厚労省は「不正請求を絶つために、養成段階での人材の質の向上が必要」と判断し、新しいカリキュラムも導入する。

 新カリキュラムでは、修了するための必要単位数を85から99単位へ引き上げ、職業倫理と保険の仕組みなどの社会保障制度の授業を1単位(15時間)ずつ追加する。

 さらに高齢化社会に対応するため、高齢者の身体理解を深める授業も追加。これまで明確でなかった最低履修時間についても、2750時間以上と設定する。

 柔道整復師 厚生労働相が免許を与える国家資格。「ほねつぎ」としても知られる。日本古来の武術である「柔術」をルーツとし、骨折や脱臼、捻挫などのけがを、骨を動かしたり固定したりして治療。保険の対象となる施術を受けた際の費用を「療養費」という。平成26年度は保険から約3800億円が支払われた。1990年代に3万人ほどだった柔整師は、規制緩和で約6万4千人に急増した。