(中)「なぜ選対に入り込めたのか」 自衛隊人脈と不可解な会計処理 

失墜 田母神元空幕長逮捕
「B事務所」の項目がある報酬リスト

 「今日は小沢先生の勉強会だから」

 平成26年2月の東京都知事選で落選した田母神俊雄(67)。その選対事務局長を務めていた島本順光(69)はこう言っては事務所を抜け出すことがあった。小沢先生とは当時、生活の党代表だった衆院議員、小沢一郎(73)のことだ。

 「閣下(田母神)の事務所で堂々と『先生』と呼ぶことに違和感があった」。そんな陣営スタッフをよそに、島本はいそいそと勉強会に赴いた。

 航空自衛隊出身の島本。実は退官後も、2人の“将軍”経験者に仕えた。1人は空将から参院議員に転身し、20年に死去した田村秀昭だ。田村は「豪腕」「壊し屋」と呼ばれた小沢の腹心で、島本は請われて、公設秘書に就任した。

 田村が政界を退くと、島本は小沢に近い議員らのもとを渡り歩き、もう1人の将軍、田母神と出会うことになる。

 「正直、僕らと一緒に新しい保守の流れを作ろうという思いは感じなかった。彼がなぜ選対の中枢に入り込めたのかは分からない」(陣営関係者)

 陣営幹部にはほかにも自衛隊出身者らが名を連ねる。だが、彼らが集まった理由について、田母神の思想や政策への「共鳴」とは別の何かを感じ取った陣営関係者も少なくない。

 「収支概算報告書(A案)」。運動員への報酬配分を示す複数のリストの1つには「B事務所」との項目がある。複数の関係者によると、自衛隊出身者が幹部を務める防衛関係の2つの会社を意味している。このうち1つは島本が副代表を務めている。

 島本の欄にある金額200万円のうち、B事務所の項目に155万円が計上され、残りの45万円は「都民の会」の項目に記載がある。これは田母神の資金管理団体の前身だ。

 ある関係者は「なぜ項目が分かれているのかは、島本にしか分からないが、選挙報酬に関する不正な会計処理を示していることは間違いない」と語る。

 報酬配布について、田母神は「政治家の秘書を20年もやっている島本が言うのだから、選挙というのはそんなものなのかと思った」と振り返る。

 一方、空自では田母神の先輩に当たる島本は逮捕直前、「自衛隊におり、上司の許可を得ずに独断ですることは戒められていた」と語り、「(田母神の)了承を得ずに報酬を出すことはない」と言い切った。

 今回の事件について、田母神との共著書がある作家の拳骨拓史(げんこつたくふみ)(39)は「法である以上、(田母神が)知らなかったでは通じない」と指摘する。その上でこう悔やんだ。

 「選挙違反を勧めたのも元自衛官だとすれば、陣営の人材の薄さを露呈している。(田母神の)カリスマを利用しようとしていた魑魅魍魎(ちみもうりょう)に囲まれていたのだろう」(呼称略)