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【環球異見・孔子学院の閉鎖】米紙「中国語教育を別物にするな」 環球時報「米に『学問の自由』ないのか」 英BBC「独立運営でない点が問題」

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【環球異見・孔子学院の閉鎖】
米紙「中国語教育を別物にするな」 環球時報「米に『学問の自由』ないのか」 英BBC「独立運営でない点が問題」

学内に「孔子学院」がある米東部の大学のキャンパスに建てられた孔子像 学内に「孔子学院」がある米東部の大学のキャンパスに建てられた孔子像

 米国と中国の対立が貿易戦争などで先鋭化する中、中国語と中国文化の普及を目的に中国政府が大学などと提携して世界各地に設置している教育機関「孔子学院」の米国での閉鎖が相次いでいる。中国政府の政治宣伝機関と化しているとの批判が高まり、北フロリダ大学が今月、閉鎖を決めたのをはじめ、閉鎖や制約を求める動きが各地で加速しているのだ。中国の官製紙は反論し、対立は文化戦争にも拡大した。

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 □ボストン・ヘラルド(米国)

 米紙ワシントン・ポストのコラムニスト、ジョシュ・ロギン氏は14日の記事(電子版)で、米国で孔子学院の活動に制約をかける動きが始まっていることを歓迎し、この問題について「最善の方策を構築し、リスクを最小限にするための全国的な議論が必要だ」と呼びかけた。

 トランプ政権は13日、2019会計年度の国防予算の大枠を定める国防権限法で、全米の教育機関で実施している外国語教育プログラムの予算が孔子学院に流れるのを国防総省が阻止する条項を盛り込んだ。これを受けて、ロギン氏は「米政府が資金を払うべきは中国語を学ぶ米国人生徒であって、中国共産党の影響下にある機関ではない」と強調。「米国の大学は、米政府か、中国政府の資金かどちらかを選択することを迫られる可能性がある」とし、国防総省のプログラムを受ける米国の大学にとって孔子学院閉鎖に向けた圧力になると期待感を示した。

 一方、米東部マサチューセッツ州のボストン・ヘラルドは19日の社説(電子版)で、「米国人生徒に中国語を教えることは文化や経営、科学の面でもとても重要だが、米国政府が、自国の高い教育システムを通じて行うべきだ」とし、孔子学院に反対の立場を鮮明にした。

 「米国の大学は、英国やシンガポール、スイスに工学プログラムを外注していないのに、なぜ、中国語教育は別物なのか」と疑問を呈し、「孔子学院は、中国共産党の理念を生徒たちに洗脳するというあからさまな試みは行っていないとしても、中国政府はサブリミナル・メッセージの技術に優れている」と危機感を示した。トランプ政権による措置を「米政府がようやく行動を起こした」と歓迎したうえで、閉鎖に動かない大学関係者に対し「大学の活動家たちは、米国の保守的な思想家が構内にいることを許さないが、中国共産党が『彼らの』言葉で話すことは許している」と皮肉った。(ニューヨーク 上塚真由)

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 □環球時報(中国)

 中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は17日の社説で、北フロリダ大学などで孔子学院が閉鎖されたことについて「米国の異常な警戒心」が善意の国際交流を阻害していると主張し、中国側は“被害者”の立場だと強調した。さらに孔子学院の閉鎖は「ルビオ米上院議員らによる繰り返しの圧力」が原因だと指摘。こうした圧力は米国の政治勢力が大学教育に干渉する典型的な一例であり、米国が公言する「学問の自由」は形無しだと皮肉った。

 同紙によると、主に現地の大学と連携して開設される孔子学院は現在、米国に約110カ所、小中学校・高校などに設置される孔子教室は約500カ所ある。社説は「学生から幅広く支持されており、カリキュラムについて批判を受けるような事態は起きていない」と言及。米国でイデオロギーの浸透を図っているとか、スパイ活動を行っているとの非難は「米国のエリートがつくりだしたものだ」と切り捨てた。

 その根拠として「孔子学院の中心的な活動は中国語の教育」だと主張し、批判の一因となっている「中国国内の教材を使用したり、中国にとって敏感な話題を避けたりすること」は、中国人が国外で中国語を教える際の自然なやり方だと訴えた。

 「米国人の10分の1ほどの警戒心が中国人にあれば、中国では米国のハリウッド映画やドラマは完全に禁止され、ミッキーマウスやドナルドダックといった米国文化のシンボルは一掃されるだろう」。社説は自国が海外の映像や書籍、ネットコンテンツなどに対して厳格な検閲を行っていることは棚に上げて、奇妙な理屈を展開した。

 さらにルビオ氏らを「過激な政客」や「イデオロギーの偏執狂」「排外的な人間」などと決めつけ、「こうした人々は中国ではインターネット上の小さなグループの中でしか活動できないが、彼(ルビオ氏)は米国の主流な論壇を支配し、なおかつ国際交流者を怖がらせている」と非難した。(北京 西見由章)

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 □BBC放送(英国)

 米国で孔子学院の閉鎖が相次いでいることを受け、英BBC放送は20日に中国語版ニュースサイトで掲載した記事で、孔子学院に関する懸念などについて研究者らの見解を交えて詳細に伝えた。

 同記事は、孔子学院について「米国の高等教育機関と契約を結ぶ際に機密保持の取り決めを求め、援助額を明らかにしないといったことが、学問の自由を損なうと学術界を憂慮させている」と指摘する。

 そして、孔子学院に対する懸念として「学問の自由」など3点を列挙した。1点目の学問の自由では、孔子学院が中国の政治史や人権問題を避け、台湾やチベット問題で中国政府の見解を無理やり認めさせているといった指摘を紹介した。この指摘を行った教育者らで構成する保守系の米団体「全米学者協会(NAS)」のスタッフは、「中国政府のイメージを美化するため、孔子学院は中国に関する言説を制限している。この種の宣伝は高等教育機関に存在すべきでない」と批判した。

 2点目は「スパイと情報収集」。米国の高等教育機関に「中国のスパイ網が浸透している」(NAS)といった懸念を示す。最後は「孔子思想と無関係」という指摘で、孔子思想などを専門とする米学者のサム・クレーン氏は「『孔子学院』という名前が誤解を招いているが、学院で教えている内容の大部分と孔子思想とは無関係だ」との考えを強調した。

 この記事で「問題の根本原因」の一つとされたのは孔子学院の体制だ。香港科技大の丁学良教授は、孔子学院のような政府主導の文化機関はドイツのゲーテ・インスティトゥートなど英仏独にも存在すると述べる。だが、これら西側の文化機関が「独立運営」なのに対し、孔子学院は「組織上、現地大学とひとつながりで、これが論争を引き起こす原因になっている」と問題点を指摘する。その上で、丁氏は「孔子学院は現地大学と組織を別々にすべきだ」と運営体制の改革を提案した。(三塚聖平)

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