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【主張】
劉暁波夫人の出国 中国の人権監視を怠るな

 中国の著名な民主活動家、劉暁波氏の妻で8年近く軟禁状態にあった劉霞さんがドイツに出国した。夫を亡くし、心身の健康を損なった末にようやく解放された。遅きに失した措置である。

 劉霞さんは自由と人権を訴えた劉暁波氏がノーベル平和賞を獄中で受賞した2010年から北京の自宅などで軟禁されていた。

 出国は劉暁波氏の死去1年を13日に控え、「病気治療のため」として認められた。劉霞さんの軟禁に国際的な非難が高まることを避けたのだろう。

 長期に投獄された劉暁波氏は末期がんと公表された後も国外での治療を許されず、中国遼寧省の病院で昨年7月に死去した。

 その残酷な対応には、1年を経てなお憤りを禁じ得ない。中国共産党とは普遍的な価値を共有できないと、改めて認識したい。

 出国した劉霞さんにはまず健康の回復に努めた上で、自身や夫の体験を含めて中国の人権侵害の実情を語ってもらいたい。実弟が「事実上の人質」として中国に留め置かれた制約はあるが、沈黙は劉暁波氏の遺志でないはずだ。

 習近平政権の2期目を迎え、中国の人権状況は悪化の一途だ。3年前に人権派弁護士らが一斉検挙された事件では、現在も関係者の法曹資格剥奪や法律事務所閉鎖などの弾圧が続いている。

 潤沢な治安対策費の下で人工知能(AI)を駆使した国民監視も進む。監視カメラと連動した顔認証技術や、会員制交流サイト(SNS)を通じた個人情報の収集と管理を徹底している。

 国境を越えた情報活動に利用される懸念から、米国防総省などは中国の大手通信機器メーカーの製品の調達を禁じた。高度技術を使った監視の目や耳が、中国国内にとどまらない可能性を警戒しなければならない。

 中国の人権状況に対し、かつて欧米諸国は通商政策とも絡めて改善を要求してきた。劉霞さんの出国は、ドイツのメルケル首相が粘り強く働きかけた成果である。貿易問題で厳しい対中姿勢を取るトランプ米大統領には、人権問題でも踏み込んでほしい。

 スパイ活動を疑われた邦人が実刑判決を受けるなど、中国の人権問題は日本にとっても懸念事項である。日中関係の改善に前のめりになることなく、人権状況への監視を強めるべきである。

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