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【産経抄】
6月26日

 トルコ共和国の「建国の父」とたたえられる初代大統領、ケマル・アタチュルクは、57歳で亡くなっている。激務と酒の飲み過ぎが寿命を縮めた。とりわけブドウが原料の蒸留酒「ラク」を好んだ。

 ▼そのアタチュルクが創立した共和人民党が推すインジェ議員は、今回の大統領選で次点に終わった。過半数の得票で再選されたのは、現職のエルドアン大統領(64)である。エルドアン氏は、2003年に首相に就任以来、15年間権力の座にあった。今回の勝利でさらに2期10年に及ぶ長期政権も視野に入ってくる。ちなみにエルドアン氏は、イスラムの戒律を守って酒をたしなまない。

 ▼第一次大戦に敗れたオスマン帝国が解体の危機を迎えた時、アタチュルクは、日本の明治維新を参考にして、西欧化を国造りの柱にすえた。1923年の共和国宣言以来、国是とされてきたのは世俗主義である。国民の9割以上がイスラム教徒であっても、公の場に宗教を持ち込むことを禁じた。飲酒にも寛容だった。

 ▼これに対してエルドアン政権は、公的機関での女性のスカーフ着用を認めるなど、イスラム色を強めてきた。イスラム教礼拝所であるモスク建設も進めている。最大都市イスタンブールの中心部の広場でも、アタチュルクの像のすぐ横で、まもなく巨大モスクが完成する。

 ▼アルコールについては、今のところ販売の規制にとどまっている。ただエルドアン氏は、民主化を求めるデモの参加者に対して、「吐くまで酒を飲む」とののしった。あくまで酒は、憎むべき西洋の悪徳なのだろう。

 ▼昨年の憲法改正により、大統領に権力が集中して、ますます強権的な政治が可能になる。ラクやビールが飲めなくなる日も近いかもしれない。

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