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【湯浅博の世界読解】92歳の返り咲き、マハティール政治の「合理性」

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【湯浅博の世界読解】
92歳の返り咲き、マハティール政治の「合理性」

マハティール氏(共同) マハティール氏(共同)

 ショーン・コネリー主演の映画「エントラップメント」を見たのは、世紀末の1999年暮れのことだった。2人の知能犯が、2000年に変わる瞬間に、銀行から大金を盗み出すアクション映画だ。山場は首都クアラルンプールにそびえる当時、世界一の高層ビルを舞台に、マレーシアの特殊部隊が犯人役のコネリーを追い詰めていく。

 この映画が封切られると、マレーシア首相府で一悶着が起きた。当時のマハティール首相が、米関係者に「映画は事実をねじ曲げている」と怒りをぶちまけた。映画は手前に雑然としたスラム街を配置し、その背後にそびえる双子のノッポビルを際立たせていた。

 ちょうど、政権が新首相府庁舎に移転した直後で、在野勢力から「壮大な無駄遣い」と批判されていた。少し前には、新国際空港を「遊休施設が多すぎる」と書いた現地紙幹部が追放されていた。

 マハティール首相にとってはノッポビルも国際空港も、祖国が先進国入りするための礎であり、そのシンボルを汚されたくなかった。彼にはゴムとスズを主要産品とするモノカルチャー経済を電子機器、繊維が主力の工業国家に変えたとの自負が強い。

 日本を見習う「ルック・イースト」政策にカジを切り、2020年までに先進国になる夢を描いていた。しかし、長期政権のまわりには、身びいきという濃霧が漂い、その内側に既得権益を守ろうとする人々が渦巻いた。

 首相は1998年に入って深刻化したアジア通貨危機の際に、国際通貨基金(IMF)路線のアンワル副首相と対立し、「欧米の植民地主義にだまされるな」と解任、逮捕の強硬策に出た。

 あれから20年近い歳月が流れた。アンワル後のまな弟子であったナジブ氏に首相の座を譲ったマハティール氏が、今度はそのナジブ氏の資金流用疑惑を批判して92歳で返り咲いた。マハティール氏がナジブ政権を倒すために、自らが監獄に送り込んだアンワル氏の根強い人気に頼った。

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