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【正論】米の戦術核の使用戦略は世界の不安定化につながる 日本が歓迎するのはおかしい 国際政治学者・三浦瑠麗

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【正論】
米の戦術核の使用戦略は世界の不安定化につながる 日本が歓迎するのはおかしい 国際政治学者・三浦瑠麗

国際政治学者の三浦瑠麗氏 国際政治学者の三浦瑠麗氏

 東アジアから撤退が進む恐れも

 通常兵力での攻撃に核兵器を報復として使うという発想は、ケネディ政権の頃の柔軟反応戦略を彷彿(ほうふつ)させる。こうした戦術核の使用は、冷戦期に欧州でソ連戦車部隊に抗するために必要と考えられていた。地上軍で負けるかもしれないところで核を使用する戦略を立て、バランスを取ろうとするものだったからだ。

 要は、米国が1・2兆ドルもの支出を躊躇わない背景には、新型の戦術核や運搬手段の開発に乗り出したい専門家や軍需産業の思惑に加えて、海外へのコミットメントに疲れた米国政治の本音が色濃く反映されているわけだ。しかし、柔軟反応戦略への回帰は、大きな問題を含んでいる。それは相互確証破壊による安定の終わりを意味するし、中東情勢を不安定化させるものだ。

 核兵器を使用することの精神的ハードルが下がってしまう危険を指摘する人たちもいる。核兵器を使える兵器とするのももちろん問題だが、引き続き使えない兵器だとするのなら、これだけの予算をつぎ込み、人員や通常兵力の必要な装備を削って、東アジアからの撤退が事実上進んでしまうことの問題もある。

 つまり、日本政府が今般の見直しを拡大抑止の強化だとして歓迎したのはおかしい。安全保障の観点から見て世界を不安定化させうる政策転換であり、米国の圧倒的な通常兵力に支えられてきた日本防衛への関与を下げたい米国政界の本音が窺(うかが)える動きだからだ。(国際政治学者 三浦瑠麗 みうらるり)

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