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【佐藤優の世界裏舞台】米、北朝鮮の核保有黙認の上で大陸間弾道ミサイル開発阻止か 日本には好ましくない方向に

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【佐藤優の世界裏舞台】
米、北朝鮮の核保有黙認の上で大陸間弾道ミサイル開発阻止か 日本には好ましくない方向に

北朝鮮の労働新聞が16日掲載した、中距離弾道ミサイル「火星12」の発射訓練を視察する金正恩朝鮮労働党委員長の写真(コリアメディア提供・共同) 北朝鮮の労働新聞が16日掲載した、中距離弾道ミサイル「火星12」の発射訓練を視察する金正恩朝鮮労働党委員長の写真(コリアメディア提供・共同)

 さらに骨抜きにされているのが公海上での臨検だ。〈石炭などの密輸を防ぐため、公海での貨物船の臨検措置も規定。貨物船が、禁輸品目を運んでいるという合理的な情報がある場合は貨物船の属する「旗国」の同意のもと、加盟国が臨検を行うことを要請した〉(同)。貨物船が北朝鮮船籍ならば「旗国」である北朝鮮の同意が必要ということだ。北朝鮮が臨検に同意する可能性はゼロだ。ほぼ無意味な制裁と言わざるを得ない。

 筆者が最も驚いたのは、金正恩・朝鮮労働党委員長の在外資産凍結や渡航禁止が盛り込まれていたが、米国がこの案を取り下げたことだ。これで金正恩がスイス、ロシア、中国などに隠しているといわれる資金は安泰だ。

 このような北朝鮮に与える打撃がほとんどない制裁決議を採択しても、北朝鮮の核兵器と弾道ミサイルの開発を阻止することはもとより、抑制することすらできない。

 イラン政府が運営するウエブサイト兼ラジオ「Pars Today」は、11日、制裁決議について〈ロシア国連大使は、北朝鮮との外交対話を求め、この問題に注目しなければ、安保理の会合は危険にさらされると警告しました。(中略)ロシアはこれまで何度も、朝鮮半島の状況を変えるには、緊張の段階的な緩和と外交が必要になるだろうと強調してきました〉と報じたが、今回の安保理における審議過程を見れば、米国のトランプ政権は、最初から厳しい制裁を北朝鮮に科す意思はなく、中露と取引(ディール)をして、安保理決議を通して体裁を整えることのみを考えていたとしか見えない。

 国連による制裁が北朝鮮の核兵器・弾道ミサイル開発に影響を与えないということになれば、米国が北朝鮮との2国間交渉に踏み切る可能性がある。そこで100万人を超える死者が出ると想定される米朝全面戦争を避けるためにトランプ政権が北朝鮮の核保有を黙認した上で、大陸間弾道ミサイルの開発を阻止することで妥協する可能性がまったくないとはいえない。

 状況は、わが国にとって好ましくない方向に進んでいるように思えてならない。

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