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【湯浅博の世界読解】世界は「中国覇権」に耐えられるか 米トランプ政権の「閉じこもり体質」への不安

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【湯浅博の世界読解】
世界は「中国覇権」に耐えられるか 米トランプ政権の「閉じこもり体質」への不安

 それでもシャングリラ会議参加者の疑念は消えない。海洋国家の米国がオバマ前政権の内向き外交どころか、北米の大きな島国に閉じこもってしまう不安感である。

 トランプ政権が温暖化ガスの削減目標を示す「パリ協定」からの離脱を決定したことは、大統領のNATO批判と合わせて米欧間に不信のミゾを深めた。メルケル独首相は「欧州は米国の指導力にもはや依存することはできない」と語り、米国に頼りすぎることを戒めた。

 米欧分断を狙う中国は、この機会をとらえて欧州取り込みを図る。1月の「ダボス会議」で、習近平主席はグローバル経済の旗手であるかのように振る舞い、パリ協定の会議でも合意成立の功労者である印象を残した。

 アジア太平洋でも、トランプ政権はTPPからの離脱を表明して、アジアの信頼を損ねた。南シナ海の沿岸国は米国が「航行の自由」作戦を継続するかに疑念をもち、米国と連携して中国から経済的懲罰を受けることを恐れる。

 大国主義を地で行く中国の習近平政権は、遠くの欧州とは笑顔で交わり、近くのアジアではヨロイを見せるのだ。米国が多国間協議から撤退するタイミングで現代版シルクロードの「一帯一路」構想で勢力圏の拡大をはかった。

 中身はインフラ投資も製品輸出の拡大も、シルクロードで栄えた時代のように中国による中国のための構想である。民主主義的な透明性などもとよりなく、古代中国の覇権を意味するパクス・シニカの拡大版といえる。果たして世界は、パクス・シニカに耐えられるのか。(東京特派員)

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