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【寄稿・イスラム国の正体】(下)活動機会得たグローバル聖戦運動 池内恵・東大先端科学技術研究センター准教授

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【寄稿・イスラム国の正体】
(下)活動機会得たグローバル聖戦運動 池内恵・東大先端科学技術研究センター准教授

池内恵・東京大学先端科学技術研究センター准教授

 イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」は、イラクやシリアで周縁領域を実効支配する土着の政治勢力としての実態とともに、その掲げる理念や組織論により、世界規模でのジハード(聖戦)への共鳴者を引きつけている。

 ジハードの究極の目的は、イスラム法が支配する領域を拡大し、そこにカリフ(預言者ムハンマドの後継者)が指導する政体を設立することにある。このことはイスラム法上の定着した通説であり、理念として反論する信者はほとんどいないが、実際に自らをカリフと主張する最高指導者バグダーディとその支持者の支配を受け入れた国はなく、進んで従おうとする人も世界のイスラム教徒の中の多数派ではない。ただし少数の信奉者を引きつけている。

 背景にあるのは、2000年代に生じたアルカーイダなどグローバルなジハード主義運動の組織・戦略論の変貌である。01年の米中枢同時テロをきっかけに始まった米国の世界規模の「対テロ戦争」で追い詰められたアルカーイダは組織を分散化・非集権化し、各地で諸勢力・個人が、インターネット上で拡散されるイデオロギーに感化されて自発的に行動を行うネットワーク型の運動へと変わった。

 13年の米ボストン・マラソン爆破や今年10月のカナダ・オタワの連邦議会議事堂での銃乱射事件のような「ローン・ウルフ(一匹狼(おおかみ))」のテロを扇動して存在感を維持しつつ、アラブ世界で政権が揺らいで「開放された戦線」が生じてくればそこに世界各地からジハード戦士を集結させ、大規模に組織化・武装化するというのがグローバル・ジハード運動の共鳴者たちが待ち望んでいた展開だった。

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