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コアラの全ゲノム配列を解読完了 絶滅危機から救う遺伝学的プロジェクト

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コアラの全ゲノム配列を解読完了 絶滅危機から救う遺伝学的プロジェクト

ピューマの遺伝的多様性を高める試み

一般に、孤立はいいことではない。遺伝子解析の結果もそれを裏づけている。「サンタアナ山脈のピューマは、遺伝的な制約を受けています。つまり、個体数が極めて少なく、遺伝的多様性に乏しく、近親交配が進んでいるのです」と、自然保護団体のザ・ネイチャー・コンサーヴァンシーに所属する生態学者のトリッシュ・スミスは言う。

スミスらは、ピューマにみられる近親交配の既知の症状、例えば「尾曲がり」を目視で確認することもできる。しかし、この肉食獣に迫る最大の危機は、目に見えるものではない。「精子数の減少による繁殖力低下や、心疾患などです」と、スミスは言う。「こうした症状が出始めると、個体群の存続はますます困難になります」

PHOTO: GETTY IMAGES

解決策はシンプルだが、簡単ではない。ピューマに道を渡らせるのだ。そのためには、エンジニアがつくった特殊なオーヴァーパスやアンダーパスを、ピューマに使ってもらう必要がある。そうなって初めて、個体群がほか個体群と交わるかたちで繁殖が行われ、遺伝的多様性が高まる可能性が開ける。自然保護団体は遺伝子解析を続けることで、こうした成果を追うことができる。

このような調査の対象は、哺乳類だけではない。ネイチャー・コンサーヴァンシーは、マルハナヒョウモントカゲの個体数回復にも、遺伝子データを利用している。どの個体群が温暖化によりよく順応できるかを調べ、優先順位を定めているのだ。

ピューマを救うのはインフラだが、コアラの場合と同じく根底には遺伝学がある。遺伝子解析の低価格化は、自然保護団体が問題を正しく診断し、解決策を見出すのに大いに役立っている。

人間たちは地球環境を大々的に破壊してきた。だが、その間違いをテクノロジーによって正すことも、わたしたちには可能なのだ。

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