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水没の危機にあるヴェネツィアを巨大な「壁」は洪水から本当に救えるのか?

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水没の危機にあるヴェネツィアを巨大な「壁」は洪水から本当に救えるのか?

 水の都として知られるヴェネツィアは、長らく高潮や洪水と戦い続けてきた。その決定打とされているのが、「MOSE(モーゼ)」と呼ばれる防潮堤の建設プロジェクトである。だが実際のところ、温暖化による海面上昇は止まりそうにない。完成が遅れに遅れているMOSEは、果たして意味をなすのか。プロジェクトに賭けるエンジニアたちの取り組みを追った。

PHOTO: GIORGIO SCHIRATO/GETTY IMAGES PHOTO: GIORGIO SCHIRATO/GETTY IMAGES

中世にヴェネツィアにつくられた造船所であり、いまは礼拝所として使われている「アルセナーレ・ディ・ヴェネツィア」。晩冬の曇ったある日、そこは21世紀的な活動によってざわついていた。エンジニアたちがヴェネツィアの干潟(ラグーナ)の状態を示す表や地図、グラフを示した画面に見入っていたのである。

これが「MOSE(モーゼ)コントロールセンター」だ。世界で最も美しい都市のひとつであるヴェネツィアを、恐ろしい洪水から守るメガプロジェクトの中枢である。約7年間にわたってエンジニアたちは、ここで仮想の「扉」を上下させ、高度な予測モデルへと役立てる一連のデータを収集してきた。

数十の島々に張り巡らされた運河と橋によって「水上都市」として知られているヴェネツィアは、何世紀にもわたって浸水の問題に取り組んできた。しかし、地盤沈下や地球温暖化によって引き起こされるより大規模な高潮により、この都市はこれまで以上に洪水に弱くなっている。このため防潮堤は、将来の災害を防ぐための最良の手段と思われていた。

MOSE(Modulo Sperimentale Elettromeccanicoの頭文字をとったもので、「電気機械実験モジュール」を意味する)は、いま最も注目を浴びている世界最大級の土木工事のひとつだ。MOSEは干潟にある3つの入江の入口に張り渡された格納式の水門から構成されている。これらの門は操作できるようになっていて、満潮のときは一時的な防壁を築くことが可能だという。

MOSEの工事は2003年に始まったが、汚職事件や財政的な問題、構造上の問題によって引き起こされた無数の遅れのせいで、防潮堤はいまだに完成していない。しかし手間のかかる作業は終わっており、コントロールセンターの大部分のエンジニアは、もう間もなくシステムが完全に使用できるようになるだろうと確信していた。

だが、工事の最終段階が何カ月も停滞しているため、それが厳密にいつになるのかは誰にもわからない。年内遅くにはと主張する人たちがいる一方、また別の人々は2020年が現実的だろうと述べている。

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