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生物の記憶はRNAを移植すれば「移し替え」できる アメフラシを用いた実験で明らかに

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生物の記憶はRNAを移植すれば「移し替え」できる アメフラシを用いた実験で明らかに

学術誌『eNeuro』で発表されたこの研究には、アメフラシの感覚細胞や運動ニューロンに対する試験管内実験も含まれている。実際に訓練を課された動物は、感覚細胞がより反応しやすくなることがわかっている。

研究者たちは、この状態が特殊なRNAの存在によるものかどうかを検証したかった。そして結果はその通りだったのだ。訓練されたアメフラシのRNAと接触していると、培養された感覚細胞はより反応しやすくなっていた(しかし、運動ニューロンはそうならなかった)。

人間へ応用できる可能性も

RNAは細胞のメッセンジャーだ。これはDNAに貯蔵された遺伝子情報のコピーであり、タンパク質の合成を可能にする。しかしそれだけではない。もはや何年も前から、科学者たちは細胞が適切に機能するために非常に重要なほかの機能も知っていた。

例えば、遺伝子発現を制御する役割がそうだ。RNAが変化すると病気を引き起こす可能性があるのだという。そして今回の研究により、RNAに関する知識はさらに広がった。これが記憶のメカニズムにもかかわっているらしいことを発見したのである。

さらにグランツマンによると、この研究は記憶がシナプスのレヴェルだけでなく、ニューロンの核の中にも貯蔵されていることも示しているのだという。

これはアメフラシに対する実験にすぎず、人類とは大きく異なる生物だと反論する人もいるかもしれない。しかし、グランツマンによれば、アメフラシは(人間の1,000億に対して約2万の細胞で構成される神経系をもつにすぎないにもかかわらず)記憶のメカニズム研究のための最も優れたモデルとなる動物のひとつなのだという。実際、そのメカニズムはわたしたちのものと似ている。

わたしたちは長い道のりのスタート地点に立っているだけである。だが、研究者たちは結果が実に有望なものであると考えている。

ひょっとしたらそれほど遠くない将来、病気で記憶を失った人の記憶を回復させたり、PTSDによる機能障害を治すための新しいアプローチを開発したりできるようになるかもしれない。とはいえ短期的には、まずどのようなタイプのRNAが記憶の運搬を司っているか特定することから始めねばならないだろう。

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