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北極圏の氷の下にある「軍事基地の廃墟」から汚染物質が流れ出す 気候変動がもたらす環境破壊の行方

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北極圏の氷の下にある「軍事基地の廃墟」から汚染物質が流れ出す 気候変動がもたらす環境破壊の行方

気候変動が引き起こす「環境破壊ドミノ」

環境破壊につながる廃棄物処理の費用負担は、よく耳にする問題だ。米国では、汚染された地域に対する責任を「スーパーファンド法」で定めており、長年にわたって複数の団体が関与することも少なくない。

しかし、今回のような国際的な2国間の協定では、責任や費用負担を分担するプロセスは通常存在しない。コルガン教授は言う。

「こうした協定では、本来定めておくべきことが詳細に記されることはほとんどありません。論争に対処する手続きは現実的には存在しないのです。もしデンマークと米国が責任を押しつけ合えばどうなるでしょうか。解決への良策はありません。気候変動は、似たような問題を数多く浮き彫りにするでしょう」

グリーンランドで外務大臣を務めていたある政治家はすでに、この問題が原因で辞任に追い込まれた。この政治家は2016年に報告書が発表されたあと、米国とデンマークに対し、責任をもって軍事廃棄物を処理するよう強く求めた。グリーンランドのトップは、その主張がいささか攻撃的すぎると考えたようだ。

しかし、問題が片付く気配はない。コルガン教授は、気候変動がもたらす二次的な環境破壊を「ドミノ効果」と表現している。これからはさらにこうした問題が頻発し、解決が困難な政治的論争を呼び起こすことになると指摘する。

17年8月に米国南部を襲った大型ハリケーン「ハーヴィー」でも、化学工場や石油精製会社が汚染された排水を廃棄し、周囲を汚染することが懸念された。ハリケーンから発生するような環境破壊には通常、複数の要因が絡んでいる。

しかしグリーンランドのケースでは、簡単に原因を絞ることができる。コルガン教授は、「キャンプ・センチュリーは完全に隔離された場所にあるため、問題の要因は明らかに気候変動にあるとわかります」と言う。

1960年代の米軍は、氷の下の極秘基地が数十年後に環境問題を引き起こすなど、想像もしていなかっただろう。基地は氷に封印されたはずだった。しかし、年月とともにもっと深く埋もれていくという彼らの目論見は外れたのだ。

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