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北極圏の氷の下にある「軍事基地の廃墟」から汚染物質が流れ出す 気候変動がもたらす環境破壊の行方

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北極圏の氷の下にある「軍事基地の廃墟」から汚染物質が流れ出す 気候変動がもたらす環境破壊の行方

コルガン教授も参加した2016年の調査報告書で、研究者らは放射性廃棄物よりも、むしろ高濃度化学廃棄物の危険性を案じている。ディーゼル燃料や絶縁油、塗料として使われたポリ塩化ビフェニル(PCB)といったものだ。

研究チームの見積もりによると、キャンプ・センチュリーには化学廃棄物が2万リットル、それに「未処理の下水に残る生物系廃棄物」が2,400万リットルあるという。キャンプ・センチュリーだけでの話だ。

グリーンランドで米軍が閉鎖した基地はほかにも3つあるが、そこにどれだけの廃棄物が残されているのかは定かでない。研究者らによると、今後20~30年の間に氷床から溶融した水によって汚染物質が漏れ出し、グリーンランドに住む人間や野生生物に悪影響を及ぼす可能性があるという。

3カ国が絡む廃棄物に誰が責任を負うのか

氷で守られた軍事基地をつくるには、デリケートな政治的交渉が必要だった。米国は当時グリーンランドを統治していたデンマークとの合意の下、かの地に複数の基地を建設した(現在のグリーンランドは自治政府を置いているが、いまでもデンマーク王国の一部だ)。

基地に対する両政府の責任については、ある程度の原則が定められてはいた。だが、コルガン教授が先の報告書で記しているように、グリーンランドに米国が配備した核兵器は外交上のグレーゾーンにあった。

デンマーク政府は核兵器に反対の立場をとっており、グリーンランドに核兵器基地をつくるなど許すはずがなかった。しかし、当時の米国大使ヴァル・パターソンは57年、デンマーク首相H.C.ハンセンと公式の予備交渉を開始した。

「もし米国がグリーンランドに核を保有していたとするならば、デンマーク政府はそれを知りたいと思うか」という問いかけに対し、首相は5日後に返事をした。「非公式で個人的な、極秘扱い」の書類において、「貴殿の発言について、当方から意見を述べることはないと考える」と記したのだ。米国は計画を実行に移した。

基地に残された物的資産についても、責任の所存は曖昧だ。米国の所有物ではあるが、協定ではこうした資産はデンマーク政府の協力によって、グリーンランドにおいて「処分できる」ものとされている。しかし、長期的に環境を脅かす廃棄物の責任を誰が負うかは、まったく明らかにされていない。

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