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がんは「1滴の血液」から早期発見できるのか 進化するリキッドバイオプシー技術の「夢」と現実

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がんは「1滴の血液」から早期発見できるのか 進化するリキッドバイオプシー技術の「夢」と現実

機械学習の活用によって精度を向上

それでもパパドポラスの検査法は大きな前進だと、オクスナード教授は評価する。第一に、腫瘍のありそうな位置を特定できるようになる。これは、従来のリキッドバイオプシー技術の大きな限界となっている点だ。

がんがあることはわかっても、そこからどうすればいいのかわからない。どこを探せば腫瘍が見つかるのか?

ほとんどの遺伝子変異は、腫瘍の位置を示す情報をもたらさない。しかし、ジョンズ・ホプキンズ大学のチームは、31種類のタンパク質の測定結果を機械学習モデルに追加することにより、結腸直腸がん、膵臓がん、卵巣がんの原発組織を約80パーセントの精度で特定することに、初めての試みで成功した。

もうひとつの利点はコストだ。パパドポラスは、この検査を1回500ドル前後で商用化できると予測している。同一領域の解析を多数回行う超ディープシーケンスを用いたがん検出法では、単一遺伝子のみを調べる既存のスクリーニング検査の費用を増大させる可能性がある。

「このような解析は素晴らしい成果であり、臨床現場で現実のものになる可能性を期待させるものです」と、パパドポラスと同じジョンズ・ホプキンズ大学に所属する腫瘍学者のヴィクター・ヴァルキュレスキュは述べる。彼もリキッドバイオプシー技術の開発に取り組んでいるが、今回『Science』に発表された研究には参加していない。

パパドポラスとヴァルキュレスキュは、友好的な縄張り争いとでも呼ぶべき競争を繰り広げている。おかげで、ジョンズ・ホプキンズ大学のあるメリーランド州ボルティモアの地は、いまやリキッドバイオプシーのちょっとした拠点だ。

両者は最近、各自の早期発見技術のプラットフォーム開発を促進すべく、それぞれ診断分野の会社を立ち上げた。ヴァルキュレスキュが立ち上げたヴェンチャー企業、パーソナル・ゲノム・ダイアグノスティックスは18年1月、製薬大手ブリストル・マイヤーズ・スクイブが主導したシリーズBで7,500万ドルの資金を調達した。同社のこれまでの調達総額は9,900万ドルに達する。

より知名度の高いシリコンヴァレーの一部競合と肩を並べたことで、米国の東海岸と西海岸にまたがる実用化に向けた競争は、いっそう興味深い状況になってきている。それに、この競争がどんな結末を迎えようと、最終的に利益を得るのは当の患者たちだ。

「現時点では検出する方法のないがんを、たとえ50パーセントでも見つけられるとしましょう。それはすなわち、50パーセントの患者が、治る見込みの高いステージ1で治療を始められることを意味します」とパパドポラスは述べる。「必ずしも完璧でなくても、多くの命を救うことができるのです」

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