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がんは「1滴の血液」から早期発見できるのか 進化するリキッドバイオプシー技術の「夢」と現実

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がんは「1滴の血液」から早期発見できるのか 進化するリキッドバイオプシー技術の「夢」と現実

しかし近年、感度の高い検査やコンピューティングプラットフォームの登場によって、バイオマーカーの発見とその測定方法の向上が進んでいる。このため多くの資金豊富なスタートアップが、この分野に引きつけられている。

例えば2016年には、世界最大のDNA解析企業イルミナが、グレイル(Grail)という新会社をスピンアウトした。グレイルの掲げるミッションは、「治療可能な初期のがんを検出する」ことにある。同社は17年に調達した12億ドルのヴェンチャーキャピタル資金を、大規模な集団ベースの臨床研究と、同社が開発した高感度解析技術の最適化に充てる意向を示している。

ところがグレイルは、まだ実際のデータを発表していない(同社がウェブサイトで紹介している文献は、17年に『Cell』誌に発表したコメンタリーくらいだ)。そしてそれは、シリコンヴァレーにおけるグレイルの主要なライヴァル、フリーノーム(Freenome)も同様である。

機械学習分野のスタートアップで創設3年のフリーノームは17年3月、アンドリーセン・ホロウィッツ主導のシリーズAで6,500万ドルを調達した。同社が検出を目指しているのは、腫瘍細胞が放出する遺伝子の断片だけではない。免疫系が腫瘍の微小環境に反応して示す変化なども対象にしている。

当然ながらフリーノームも、そのような検査の仕組みについて詳細をほとんど明かしていない。「自分の手札は、ポーカーの途中ではなく最後に見せるものです」と話すのは、アンドリーセンのパートナーで、バイオ関連の投資を指揮するヴィジェイ・パンデだ。「研究成果を発表するということは、それで会社を立ち上げる気がないということです」。とはいえフリーノームも、この分野への参入を果たす際には、事前に査読付きの学術誌に研究成果を発表するものとパンデはみている。

手順を短縮する方法のひとつにすぎない?

しかし、実際それがいつになるかは誰にもわからない。この種の血液検査の精度を評価するには、何千人もの患者でテストを行い、そこから実際にがんを発症する人が出るのを待たなくてはならない。それが検査の予測精度のみならず、検査が患者の予後改善につながるかを評価する唯一の方法なのだ。

乳がんのマンモグラフィー検査や、前立腺がんのタンパク質測定検査など、現在実施されている非侵襲的なスクリーニング検査には過剰診断などの問題も多い[日本語版記事]。誤った診断は、治療にかかる時間と費用のムダであり、患者に必要のない不安を与える。

リキッドバイオプシーも同様の論争に見舞われる可能性があると指摘するのは、ハーヴァード大学ダナ・ファーバーがん研究所で胸部腫瘍学を研究するジェフ・オクスナード教授だ。同教授は、担当の肺がん患者に最も適した薬剤を見極める方法として、ダナ・ファーバー研究所で開発された単一遺伝子に対するリキッドバイオプシー技術を常用している。

しかし、早期発見のためのリキッドバイオプシーが、診察で常に用いられる検査となる日が来るかについては懐疑的だ。「この種の検査は、がんの家族歴がある人や、すでにスキャン検査で異常が見つかっている人については、リスクの程度を見極めるために役立つでしょう。しかし、リキッドバイオプシーがあらゆるがんを診断できることを裏づけるデータは存在しないと思います。結局のところ、手順を短縮する方法のひとつにすぎないのです」と、オクスナード教授は語る。

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