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平昌五輪は、こうして「北朝鮮の脅威」からも守られる-多国籍部隊による保安活動の舞台裏

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平昌五輪は、こうして「北朝鮮の脅威」からも守られる-多国籍部隊による保安活動の舞台裏

一方、DSSは国務省に毎日の報告を行うほか、海外安全対策協議会(OSAC)とも連携する。OSACは米国外で展開する団体・企業で大会に関わる可能性のあるものが任意参加する組織だ(例えばテレビ局のNBCは2,000人を現地入りさせるほか、コカ・コーラ、ブリヂストン、ゼネラル・エレクトリック(GE)といった主要スポンサーもそれぞれのチームを送り込むだろう)。

繰り返しになるが、すべてはコミュニケーションにかかわることだ。リースタッドは「わたしたちの強さは情報の共有にあります。コミュニケーションが断たれることによる利益は何もありません」と強調する。

共有される情報の具体的な中身は多岐にわたる。1996年と2000年の夏季五輪で国務省のテロ対策を統括し、同省とFBIの安全保障コンサルタントも務めたトーマス・ヘイスティングスは、「共同運営センターは韓国政府のセキュリティー機構の一部に組み込まれており、一連のコミュニケーションシステムと合わせて機能します」と話す。

「共有される情報の内容は大会そのもの、会場、選手、また今後に控える重要なイベント、メディアによるイベントの報道にとって、実際のテロリストたちと同じくらい脅威になり得ます。またサイバーテロの脅威に加え、従来のテロ組織などのSNSへの投稿を含むソーシャルメディアでの動きも議論の対象になるでしょう」

大会警備にかかわる機関はどこも、顔認証システム、監視用ドローン、疑わしい行動の検出が可能なスマートセキュリティーカメラ、テロに使われる化学薬品や生物兵器などを検知する各種センサーなど、華麗な最先端テクノロジーを使って情報収集戦略をサポートすることになる。DSSが手のうちの詳細を明かすことはないが、米国家偵察局(NRO)から取得した衛星データと画像を分析して戦闘や情報操作に役立てる業務を担う国家地球空間情報局(NSC)は、16年のリオデジャネイロ夏季五輪の際に詳細な対話型デジタルマップを作成したと明らかにしている。

DSSは地上レヴェルでもあらゆる先端機器を導入している。低帯域幅でも「所有者の状況と位置情報を送信できる」新しいモバイルデバイスはそのひとつだ。コロンは「できるだけ多くの技術を採り入れようとしています。人間のスタッフに加え、こうした機器も大いに役に立つからです。コミュニケーションを可能な限りスムーズにするために、複数の通信技術を利用しています」と言う。

あらゆる想定に対策を

大会を目前に起こった北朝鮮と韓国の融和の兆しは歓迎すべきものだが、だからといってすべてがうまくいくわけでは決してない。開会式前に共同運営センターでさまざまなシナリオを想定した模擬訓練が実施されることは公表されているが、DSSはそれ以外は緊急対応計画の詳細を明らかにする予定はないという。

テロの脅威に対抗するための最先端の備えに関していえば、保安部隊はさまざまな戦術を用意しているとセキュリティー専門家のシンガーは話す。「例えば、ロボット装置を使った空からの攻撃に対しては、まずは会場周辺の空域を閉鎖し、その後にドローンと思われる物体を追跡する各種の技術を活用します。保安部隊は問題の物体を撃墜するか、妨害電波を出して飛行不能にする技術を持っています。またハッキングによってハイジャックや飛行の妨害を行ったり、あるいは単に電子的に制圧することもできるのです」

一方、サイバー戦のおける主要な対抗策は事前に問題を察知することで、このうえで重要なのが他機関と情報共有だ。シンガーは「問題となりそうなものを発見したら、それを追跡するだけで攻撃された場合の回復力が上がります」と指摘する。

「サイバー戦における優れた諜報活動とは、特定のマルウェアを監視していると警告するだけでなく、特定のグループが何をしているのか知ることです。脅威が検出されたら、ある状況において問題となるグループがどのような手法を使ったか知ることにより、現在の状況でもそのグループを疑うべきか考えるのに役立ちます」

最後に、本当の大惨事(大規模なテロ攻撃や核攻撃、自然災害などだ)が起こる可能性もシナリオに含まれている。リースタッドは「いかなる事態に対しても対策が練られています。最悪の場合を想定したうえで、関係機関が揃ってシミュレーションして対策を立てました」と言う。

結局のところ、平昌五輪の目標は至ってシンプルだ。それは、雪と氷の上で繰り広げられる感動のドラマが実現することである。そして大会がどのように進行しようと、地政学的緊張が沈静化する兆しが見られない世界においては、DSSと世界各国の保安機関はこの五輪を観察し、次なる大きなイベントに向けて自らの方法論に磨きをかけることになるだろう。

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