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「抗生物質まみれ」の食肉産業は今後どうなる 業界の「闇」に迫った科学ジャーナリストが語った

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「抗生物質まみれ」の食肉産業は今後どうなる 業界の「闇」に迫った科学ジャーナリストが語った

WIRED:いま読んでみると、確かに彼らは気が狂っていた、あるいは少なくともそれに近い愚か者だったということが明らかにわかります。ただ、大量の抗生物質を家畜に与えることによって何らかの悪い結果が出る恐れがあることを知らせるものは当時あったのでしょうか。

マケナ:実を言うと、個々の話をつなぎ合わせて歴史全体を明らかにしようとしたときに、最も驚いたことのひとつがそれでした。最初は、農業で無計画に抗生物質を使うことに関する懸念は、かなり新しいものだという印象をもっていたのです。ですから、抗生物質の意図しない結果に関する警告が使用開始当初から出されていたことを知って、ショックを受けました。

1948年以降、10年ごとに誰かが立ち上がり、「われわれは間違っている。これは抗生物質の活動を弱めることになり、人々を病気にする」と何度も警告してきました。しかし、そのような人はすべて拒絶され、警告は聞き入れられませんでした。最初に実験を行い、成長促進剤として抗生物質を養鶏農家に販売するというこの事業を始めた会社の研究者のなかには、「こんなことをするべきではない」と言う獣医たちもいましたが、その発言は上司に封じられました。

一方で、1940年代に導入されたこの方法を始めた科学者や生産業者たちのほとんどは、自分たちの行為は完全によいものだと心から思っていました。彼らの望みは、食肉を手ごろな価格にすることであり、世界中に食料を提供することであり、第二次世界大戦の被害を修復することでした。彼らがいい加減だったというわけでもありません。単に、自分たちがやりすぎているのではないかという問いを深く考えなかっただけです。その理由として、当時は分子レヴェルまで調べることができる機器がなかったことも挙げられますが、単に想像力が欠けていただけだとも言えます。

WIRED:政府当局は当時何をしていたのですか。

マケナ:ジミー・カーター政権による改革の一環として、1976年に米食品医薬品局(FDA)の長官となったドナルド・ケネディは、抗生物質を動物に日常的に使うと何がつくり出されるかについて、40年代以降に公開されたすべてのデータを集め始めました。そして1年後、あらゆる科学的証拠をまとめた結果、すべてにおいて「それはしてはならないことである」と明確に示されたのです。

FDAは、米国農業で使われる成長促進抗生物質を禁止しようとしましたが、失敗しました。それは、別の科学的な見解によるものではなく、経済や政治の力によるものでした。その後、FDAは複数の政権を通じて、科学的見解を無視する努力を続けました。オバマ政権になってやっと、この議論の条件を変えることが決まったのです(オバマ大統領時代のFDAは2015年、食用の牛や鶏などへの抗生物質投与について、抗生物質の投与は病気を防ぐ目的に限り、成長の促進のための使用を禁止するなどの規制指針をまとめた)。

WIRED:現在はどのような状況になっているのでしょうか。将来については楽観的に考えていますか。それともわれわれはみな、畜産業によって抗生物質の効かない耐性菌による、ゆっくりとした痛みを伴う死を迎える運命にあるのでしょうか。

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