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ボブ・ディランの「新しくない」という新しさ--中川五郎が「ディランの文学」に学んだこと

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ボブ・ディランの「新しくない」という新しさ--中川五郎が「ディランの文学」に学んだこと

 2016年のノーベル文学賞を受賞したのは、ボブ・ディランだった。ディランの全楽曲の歌詞を日本に伝える中川五郎が、今回の受賞に想うこととは? 中川が選ぶ「ディランの文学」を理解するためのアルバム5枚も紹介。

--まず、今回のディランのノーベル文学賞受賞(日本語版記事)のニュースを聞いて、中川さんはどう思われましたか?

ぼくは、ボブ・ディランの歌詞を全部訳しているということもあって、毎年ノーベル文学賞の発表の時期になると、いろいろなメディアから「もしディランが受賞したらコメントをください」と、もう6~7年前から連絡をいただいていました。イギリスのオッズ屋たちの間では、数年前からディランの名前は文学賞受賞者の候補に挙がっていたということです。

今年は例年より少ない1~2社からしか連絡がなく、ぼく自身もディランが受賞することはないと思っていたので、受賞の知らせを聞いたときは驚きましたね。ただ、その受賞理由についてはぼくもずっと誤解をしていました。

--誤解というと?

ディランがノーベル文学賞をとるかもしれないといわれていたなかで、とるとしたら、やはり彼の歌詞が評価されて受賞することになるのだろう、と思い込んでいたんです。これまでノーベル文学賞をとった偉大な詩人たちと同じ扱いで、ディランの歌詞に文学的な価値があるから彼にノーベル文学賞を授与します、と。

ところがスウェーデン・アカデミーが発表した受賞理由は、「米国音楽の偉大な伝統のなかに新たな詩的表現を創造した」こと。つまり、ディランの詩だけでなく、歌そのものが文学であるということが認められて彼は受賞することになったわけです。

もし仮に、ディランの詩だけが評価対象となっていたら、きっとディランのやってきたことのほんの一部しか見ていないことになると思うんです。彼の表現、「ディランの文学」と呼ぶべきものがあるとすれば、それは彼の言葉と、メロディーと、声と、演奏が組み合わさってつくり出されるものだということです。

だから今回、本屋さんはすごく困ったでしょうね(笑)。本に閉じ込められない表現が評価されたのですから。

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