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【夕焼けエッセー】飛ぶ鳥跡を濁す

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【夕焼けエッセー】
飛ぶ鳥跡を濁す

 いつの間にか齢(よわい)70を超え、健康寿命に不安がよぎるようになってきた。そろそろ後片付けをしなくてはと思い、ようやく重い腰を上げることにした。

 まず取り掛かったのは、学生時代以来後生大事にとっておいた本の整理である。「本は大事に取っておくべし」という当時の教えを忠実に守ったまでだが、今となっては思い切って整理するほうがよい。幸い母校の大学で古書を引き取って転売した収益を大学に寄付する制度がスタートしており、それに乗っかることにした。段ボール箱に5箱はあっただろうか。本箱がものの見事にきれいさっぱり。思い切って決断したかいがあった。

 後日大学から丁寧な礼状が届いたが、書いてある寄付金額が税務申告にたえないほど少額なのを見て恥ずかしくなった。が、「金額ではない、気持ちなのだ」と自らを慰める。どうも転売できるのはバーコードの付いた本にかぎられるらしく、売り物になった本は社会人になってからの本にかぎられたらしい。

 そして今日は、何年も手付かずにいたエンディングノート兼遺書を書き終えた。僅かばかりの遺産処置、延命措置は希望しない旨の意思表示、そして葬儀等を家族に対する思いを込めながら書き終えた。葬儀では知らせる友人・知人等のほか当日流してほしい音楽も書き添えておいた。

 「飛ぶ鳥跡を濁さず」というが、これで大丈夫だろうか。いや、きっと跡を濁すことになっていると思うので家族の皆さんよろしく頼みますよ。

坂本茂樹(71) 兵庫県西宮市

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