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【午後のつぶやき 大崎善生】僕が転んだビートルズ

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【午後のつぶやき 大崎善生】
僕が転んだビートルズ

 中学1年の時、ビートルズに出会った。深夜にラジオから流れてくる音楽に飛びつくように反応した。美しい曲だが、バンド名も曲名もわからない。翌日レコード屋へいって、店員のお姉さんの前で歌った。

 “♪アイラブユー、アイラブユー、アイラブユー”。綺麗(きれい)でちょっとエッジの立った感じのする店員は即座に「ミッシェルよ。ビートルズ」と教えてくれた。白黒の記憶の中で、店員の鮮やかな赤い口紅だけが浮かび上がる。“ミッシェル”、“ビートルズ”。初めて聞く言葉、出会う世界に私の胸はどうしようもなくときめいた。1972年頃の話で、間もなく“レット・イット・ビー”がリリースされ、ビートルズは解散した。

 当時英語を習い始めたばかりの私は、わかりもしないのにビートルズの歌詞を翻訳するのが趣味となった。「握手したい」とか「もし僕が転んだら」とか。“アイ・ワナ・ホールド・ユア・ハンド”がどうして握手ではなく“抱きしめたい”になるのか、いつも校庭の片隅で考えていた。“僕が転んだら”は“恋に落ちたら”という美しい題名で、元題は“イフ・アイ・フェル”。その頃の私にはフォール・イン・ラブに恋に落ちるという意味があるなどと知るはずもなく、考えに考えた末に“転んだら”という言葉に落ち着いたのである。「もし僕が転んだら、君が助けにきてくれるよね」。そんな感じの歌詞は、それはそれでおおらかというかのんびりしている。

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