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【とん堀幻視行(16)】異界の喧噪 道頓堀ダイブ 戎橋(下)

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【とん堀幻視行(16)】
異界の喧噪 道頓堀ダイブ 戎橋(下)

スクランブル交差点なみのにぎわいを見せる戎橋。外国人観光客の姿が目立つ スクランブル交差点なみのにぎわいを見せる戎橋。外国人観光客の姿が目立つ

 夜、大阪ミナミの戎橋の北づめの遊歩道におり、雑踏にもまれながら振りあおぐと、原色をちりばめた巨大なネオン群が、虹彩のなかでコラージュのようにかさなった。ネオン製作の技術が進歩したのだろう、どれも鮮明で動画まであった。

 北づめから長堀川(現・長堀通り)までは「島之内」と呼ばれ、かつては白壁の商家などが軒をつらねていた。戎橋をわたると、芝居小屋や茶屋、料亭、遊郭、墓地などがならび、ここはいわば異界(アナザーワールド)への誘導路であった。

 島之内の側が「ケ(日常)」の場だとすれば、橋の南側は「ハレ(非日常)」の場であった。島之内や船場のダンナ衆は仕事が終わると、ハレ着に着替え、浮かれた気分で橋をわたっていった。

 橋の上のにぎわいは、むかしから変わらなかった。十返舎一九の『東海道中膝栗毛』(続編)では、弥次さん・喜多さんが心斎橋筋から戎橋をわたると、「はやくも道頓堀に至りければ、まことに当地第一の盛り場にして、(略)おやま芸子の艶(つや)めき、行き交ふさま賑(にぎ)やか也」とつづけている。

 橋の上にもどった。欄干の銘板には、「友だちは よいものと知る 戎ばし」という川柳作家、岸本水府(すいふ)の句が刻まれていた。もちろん戦前の作品で、いま、この橋で会うのは「友だち(フレンド)」ではなく、「異人(エイリアン)」ばかりである。

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