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【夕焼けエッセー】きんぎょ 

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【夕焼けエッセー】
きんぎょ 

 40年の公務員生活を終えて、健康のため非常勤で小学校の施設管理人の仕事を始めた。4月のある早朝、「思いやり」と彫られた石碑の前の花壇に水をやっているとき、小さな水槽に赤く光るものを見つけた。金魚であった。最初は警戒していたが、シャワーの水をかけてやると、体を横にしたりして気持ちよさそうに水を浴びていた。

 そんなある日、もう1匹が警戒しながらも姿を見せるようになり、ますます楽しみになった。相変わらず1匹は、無邪気に、シャワーを楽しんでいるように思えた。

 時々、ネコが水槽を覗(のぞ)き込んでいたが、何事もなく日が過ぎていった。寒さが厳しくなった日、校庭の水道管が凍結し、プールも氷が張った。小さな水槽も厚い氷が張っていた。心配をしたが、暖かくなった日に金魚を確認することができた。いつごろから住んでいるのか分からないが、この水槽で生きてきた強さを感じた。

 また春になり、シャワーをかけてやると、2匹に小さな3匹が寄り添うように水面に姿を見せた。家族ができたように思えた。5匹の金魚と会えた日は、穏やかな気持ちで過ごせた。

 しかし、5月のある日、珍しくゴイサギが飛来してきた。悪い予感が外れることを願ったが、それから金魚は現れてくれない。毎日、水槽を覗き込み寂しい日が続いているが、登校時の児童とのあいさつをすることにより元気をもらっている。安全で安心して、学校生活を送れることを願って、仕事を続けていこうと思っている。

神岡秀年(67) 大阪府枚方市

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