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【石野伸子の読み直し浪花女】梶井基次郎「檸檬の伝説」(7)折口信夫、阪田寛夫、大谷晃一…文学者を支え影響、知的ハイカラ女性の夢

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【石野伸子の読み直し浪花女】
梶井基次郎「檸檬の伝説」(7)折口信夫、阪田寛夫、大谷晃一…文学者を支え影響、知的ハイカラ女性の夢

兄一家のもとで療養していた昭和6年1月、兄謙一が撮影した1枚(日本近代文学館蔵) 兄一家のもとで療養していた昭和6年1月、兄謙一が撮影した1枚(日本近代文学館蔵)

 そんな梶井ファミリーの逸話を知り、好奇心旺盛な阪田寛夫は「吉野通」界隈(かいわい)を久しぶりに歩いてみる。すでに基次郎が生きていたころから50年以上たった界隈にラジオ店のあとはまったくなかったが、狭い路地を行きつ戻りつしていると、「交尾」に描かれたようなわびしい大阪の路地が胸に迫ってくる。

 そんなとき、兄から新しい情報が入る。「そういえば、オートバイがあったぞ」。勇氏は当時としては珍しい「コベントリイ・イーグル」という高級車を持っていた。そこから、「サッちゃん」の作者の探究はさらに速度を増す。

 大谷晃一の評伝を読み直すと、梶井の絶筆「のんきな患者」はなかなか完成せず、できた原稿は弟の勇がオートバイで郵便局に運び、航空便で東京の出版社に送ったとある。ああ、あのオートバイではないか。

 「風防眼鏡をつけた梶井勇氏が、深夜の大阪の十三間道路、阿倍野筋から天王寺駅前、恵比須町から日本橋筋、堺筋、土佐堀河畔を中之島へと吹っ飛んで行く姿に拍手を送りたかった」(『吉野通』)

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