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【夕焼けエッセー】日本でいちばん不幸な町

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【夕焼けエッセー】
日本でいちばん不幸な町

 ふるさとは親みたいなものだ。自分では選べないし、いつかは別れなければいけない。

 私は北海道の小さな町で子ども時代を過ごした。炭鉱で栄えた町で、石炭を洗って真っ黒になった川が町の中心を流れていた。しかし、ひとたび中心街から外れると、まわりは自然にあふれていて、遊ぶ場所はいくらでもあった。家の裏手には澄んだ小川が流れていて、夏にはよく水遊びをした。秋には赤とんぼが原っぱを大量に飛び交い、小学一年生の私でも野球帽だけでいくらでも捕まえることができた。冬には家の横にある斜面をスキーでよく滑った。そうやって自然に囲まれて遊び回って子ども時代を過ごせたのは幸運だった。

 数年前、あるテレビ番組で私のふるさとが「日本でいちばん不幸な町」と紹介されていた。炭鉱が閉山してから人口は減り続け、鉄道が廃線になって人口減に歯止めがかからなくなった。最盛期には四万五千人いた人口も、今では四千人にも満たない。しかも高齢者率は45%を超えているという。これでは満足できる行政サービスは期待できず、ただ衰退していく一方であろう。あと三十年も経てば消滅するとも言われている。未来のない瀕(ひん)死(し)の状態にある「不幸な町」である。

 ふるさとは親みたいなものだ。たとえどんな状態であっても、自分にとってはかけがえのない存在だ。最期の時を迎えれば、悲しさとともに感謝の気持ちでいっぱいになる。なにしろ自分を育ててくれたのだから。

佐々木晋(56)会社員 北海道恵庭市

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