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【夕焼けエッセー】花粉症のおかげ

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【夕焼けエッセー】
花粉症のおかげ

 3月になると、鼻がムズムズし始める。

 (あー、今年も来たか……)

 と気が重くなる。目覚めた途端、モーニングアタック。くしゃみが止まらない。昼夜問わず透明の鼻水がタラタラと流れ、みっともない。薬を飲めば、副作用の眠気がきて仕事にならず。やたらと喉(のど)が渇いて水を飲み、トイレにばかり行く。夜は鼻が詰まって口呼吸。喉が痛くて目が覚め、慢性的な寝不足となる。

 これが、数カ月間つづくのだ。「花粉症」なんて、何ひとついいことがない-そう思っていた。

 R君は3歳の男の子。子供にも花粉症はあるらしく、よく目を赤くして鼻水を垂らしている。彼は私の勤める保育所の子どもで、縁あって1歳児の頃から、ずっと担任持ち上がり同じクラスで日々を過ごしている。今年の3月の初め、鼻をグシュグシュさせている彼にティッシュを渡すと-。彼はちょっとわくわくした顔で私を見て、鼻をグシュンとかんだ。そして満面の笑顔を見せる。

 「なっ?鼻かむの上手になったやろ?ずっと鼻水出してくれた花粉症のおかげや」

 「-すごいな、R君」

 「そうやろ。鼻、自分でかめるんやで」

 彼は周りの友だちにも自慢する。「すごいな花粉症」と誰かが言い「すごいな花粉」「すごいな花粉!」と、口々に言葉あそびが始まった。私はお腹を抱えて笑った。久しぶりに、すっきりした気分になった。

佐野 由美子 (48) 三重県鈴鹿市

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