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【夕焼けエッセー】孫の合格

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【夕焼けエッセー】
孫の合格

 「公務員試験合格できたよ!」。孫からの吉報にこみ上げてくる喜びで胸がいっぱいになった。

 初孫の彼は阪神大震災の年に東京で生まれた。心根の優しい明るい子だった。ところが学校での成績がふるわずテストはいつも間違いが多かった。あるとき彼は母にそっと謝ったという。「僕、賢く生まれてこなくてごめんね」

 私はその言葉に胸が詰まり、東京と関西、離れてはいても心から彼にエールを送った。「あなたは心の勉強が誰よりも良くできる子やからおばあちゃんはとてもうれしく思っているよ」

 心の勉強、それはかつて私が新卒の教師として赴任した小学校の校長先生から受けた指導の言葉だった。子供には頭の勉強の良くできる子、体の勉強の良くできる子、心の勉強の良くできる子とそれぞれの子供に良くできる長所がある。その長所を褒めてあげるように。今も忘れないその校長先生の言葉を心をこめて彼に伝えた。

 やがて彼は受験生となり希望の高校を受験するが彼に十五の春は訪れなかった。しかし彼はめげず定時制高校から保育士を目指して専門学校へと進んだ。

 そんな彼を「あなたの笑顔は百万ドルの笑顔ね」とその明るい性格を褒めてくださった幼稚園時代の先生が園長先生となり、専門学校を出た彼を講師として幼稚園に迎えてくださった。彼は働きながら区の公務員試験に挑戦した。1年目は不合格ながらも社会で働きたくましく成長した彼は翌年再び挑戦、そして合格!

 祖母の私は万感の思いで彼の合格を祝福した。

中西 博子(81) 兵庫県伊丹市

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