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【夕焼けエッセー】故郷の父

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【夕焼けエッセー】
故郷の父

 「宅急便でーす」

 父からの野菜が、今日も届く。

 今年87才。神経痛で、身体の、あちらこちらが、痛いのに、足を引きずりながら、畑に行き、私たち子供や、孫たちのために、美味しい物をと、野菜作りに、励んでくれている父。

 野菜が、とぎれる頃になると、「まだ野菜は、あるかー」と聞いて送ってくれる父。

 冬は、白菜、人参、大根、長ネギ、菊菜、里芋、きのこ、キャベツ、じゃが芋、玉ネギ、ブロッコリー、ストーブで焼いたと、焼き芋まで送ってくれる。

 夏は、オクラ、枝豆、きゅうり、トマト、ナス、とうもろこしなど、葉物の野菜には桜島の火山灰が、おまけでついてくる。

 南国、鹿児島からの、父の愛情たっぷりの送り物だ。

 父が野菜を作っている畑は、自宅の裏の坂道を、少し登った所にある。

 はるか遠くに、錦(きん)江(こう)湾、浮かぶ舟、薩摩富士と呼ばれる開(かい)聞(もん)岳が見える絶景の場所だ。

 真下には、鹿屋体育大学。校庭で、サッカーボールを追う若者たちの姿も見える。

 空気もきれい。こんな場所で育つ野菜も、みずみずしく甘いはずだ。

 相撲が大好きで、早目に風呂に入って、焼酎を飲みながら、テレビを見るのを、楽しみにしている父。

 身体に気をつけて、一年でも長く、野菜作りをと、願うばかりだ。

 今日も我が家の食卓には、父の野菜の数々が並ぶ。キーデコン(切り干し大根)の炊いたのと、きのこの炊き込みご飯、キャベツのサラダ、父に感謝しながら食する。

 いただきます。

 ありがとうと。

藤田 栄子(64) 兵庫県尼崎市

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