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【瀬戸内家族】伝統 島が育んだ命と知恵 写真家・小池英文

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【瀬戸内家族】
伝統 島が育んだ命と知恵 写真家・小池英文

八朔摘みの手を休め、ひと息つく家族 八朔摘みの手を休め、ひと息つく家族

 先週に引き続き八朔(はっさく)の話をもう少し。

 温暖な気候に育まれた瀬戸内の柑橘類。品種だけでも相当数にのぼるというが、因島が八朔の発祥地となった背景には、自然条件に加えて島を根拠地とした村上水軍の影響もあったようだ。かつて彼らは遠く東南アジアまで勢力を広げていたという。

 そこから持ち帰った柑橘の種が発芽し、やがて花をつけて交配を繰り返した結果、自然発生的に生まれてきたのが八朔のはじまりらしい。まさに歴史と風土が生み出した島を代表する特産物と言えるだろう。

 写真は八朔摘みの手を休め、ひと息つく家族の様子。中心にいるのは、今年91歳になる妻の祖母だ。

 さすがに力仕事はもう無理だが、つい数年前までは毎朝5時から農作業に励んでいたという。そこで培われた知識と経験が、今も家族の中で大きな役割を果たしているのは間違いないだろう。

 それにしても、祖母がいる風景とはなぜこうも安心感を誘うのだろうか。それはぼくらが知らない生きる知恵を、彼女が深く内包しているからに違いない。

 新しい技術や知見がすべてではない。彼女が手がけた美しい八朔畑を眺めていると、そんな思いを新たにする。

 こいけ・ひでふみ 写真家。東京生まれ。米国の高校卒業後、インドや瀬戸内などの作品を発表。今年1月、写真集「瀬戸内家族」(冬青社)を出版。ウエブサイトはhttp://www.koike.asia/

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