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【夕焼けエッセー】ひこばえと約束

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【夕焼けエッセー】
ひこばえと約束

 わが家の玄関先に南国風の葉を放射状に伸ばした、幹周りが根元で110センチの太さ、高さは2階に届き、威風を放つユッカが植わっている。高校生のとき、背丈30センチくらいの苗木を庭の片隅に植え、成長するにつれ移植を繰り返し、今の姿になり、わが家のシンボルツリーである。

 ところが樹木にも寿命があるのか朽ちてきた。茶色になった葉が次から次へと地面に落ち、風にあおられると枝を支えきれず大きく靡(なび)く。2階のベランダの手すりから綱を架け結わえて固定してあげた。

 そんな中、昨春は力を振りしぼって、香りよい釣鐘(つりがね)状の白い花を多数咲かせてくれたが、幹はぼこぼこで大きな空洞もできており今にも枯れそうである。

 なんだかわが身とそっくりだ。頭ははげてくるし、歩行ひとつ挙げても、意識しないと、スムーズに足が前に一歩一歩出なくなった。昨年同窓会で久しく会った学友からの年賀状でこれを案じて「足の方どうですか?常に動かしているとサビがこないよ」と添え書きしてくれている。

 その賀状を郵便受けに取りに出たとき、枯れかかった庭のユッカの根元に目をこらして見ると、ひこばえが吹いているではないか!新年早々、自然界からもわが身に対する思わぬ励ましがあり、周囲から勇気づけられる正月を迎えられた。

 まだまだ年を重ねても成し遂げたいことや、これまでやったことがないことも始めたいと無性に思うのである。年始めにせっせと体力維持に努めることをひこばえと約束し合った。

岩井 宏守(ひろし) (74) 自営業 大阪府八尾市

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