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【正木利和の審美眼を磨く】手強すぎる! 年の暮れ、鉄斎の龍の絵を読み解く話

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【正木利和の審美眼を磨く】
手強すぎる! 年の暮れ、鉄斎の龍の絵を読み解く話

富岡鉄斎「昇龍図」の箱書き 富岡鉄斎「昇龍図」の箱書き

 振り返れば、ことしもいろんなものを買った。

 スーツ、革靴をあつらえたばかりか、はじめてコートもつくってみた。

 自分のからだにフィットするものは、やはりいとおしい。だから、丁寧に身につけようと思うようになる。

 実際、家に帰れば必ず、ご苦労さんといいながら、服や靴にブラシをかける習慣がついた。休みになるとアイロンをかけ、靴を磨き上げるようになった。

 ささやかではあるけれど、あつらえることによって、ものを大切にする心が育まれるようになった。

 もちろん、ちょっと(かなりかもしれない)無理をしたり、背伸びをしたりしなければならないが、それを高いと思うか、安いと思うかは自分次第。

 そうした身の回りのものとは異なるものの、古書画もまた、ひとの心の持ちようを変えてくれるように思える。

 よいものには、見る人のこころに語りかけてくる力がある。

 心に響いてくるものを部屋に飾れば、日々の暮らしも少し変わってゆくように感じられるのである。

   □    □

 暮れに、南画家、富岡鉄斎(1836~1924年)の「昇龍図」という掛け軸を手に入れた。

 鉄斎は龍の絵をけっこう描いている。なかでも有名なものは、宝塚市の清荒神清澄寺にある「昇天龍図」であろう。飛龍が上へ上へと向かっていく図で、いかにもめでたい。

 それに対して、こちらの水墨で描かれた龍は画題に反し、昇っている様子には見えない。しかし、両眼はしっかりと上を向いている。おそらく、ここから天高く舞い上がろうとしているところなのだろう。

 箱には表側に「昇龍図」とあり、その裏には「大正五年龍集丙辰一月試筆九九八十一齢」と記したうえで、自署をしている。

 鉄斎は、自分を画家ではなく儒者であり、学者だと思っていたので、自分の絵を見る前に、まずそこに書かれた文字を読んでくれ、といっていたそうだ。

 しかし、万巻の書を読み、千里の道を行くのが文人である、というポリシーをもっていたこともあって、難しい漢字や熟語などが次々に飛び出してくる、なかなかてごわい文である場合が多い。

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