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【正木利和のスポカル】2000年後には、ルノワールの絵画もこんなに朽ち果ててしまう…1層100年の時を積み重ねて作った絵

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【正木利和のスポカル】
2000年後には、ルノワールの絵画もこんなに朽ち果ててしまう…1層100年の時を積み重ねて作った絵

柴川敏之「出現II40041121(2000年後に発掘された絵画の出土品:ルノワール)」(個人蔵) 柴川敏之「出現II40041121(2000年後に発掘された絵画の出土品:ルノワール)」(個人蔵)

 小さなころ、たんすの引き出しのなかに古いモノクロームの写真グラフがあるのを見つけた。

 ブルーの表紙を開けると、1枚目には山が写っている。パラパラとめくっていくうち、これは欧州の風景だとわかった。なぜなら、石畳と石造りの建造物ばかりが写っている。

 それも、廃虚、といっていいくらい、かなり古い。

 何枚目かをめくったとき、衝撃的な写真が目に飛び込んできた。ガラスケースのなかに、うつむいた人がおさめられている。

 石のように固まって見えるが、それは彫刻などではない、確かに「人」だ、と直感した。そこからいくつかの廃虚を写したページにはさまって、同じように固まったあおむけの人やイヌの姿をおさめた写真があった。

 不気味で不気味で、そのときは冊子を閉じ、急いでもとのところにもどした記憶がある。

 だれのものなのか、とんとわからなかったのだが、小学校の高学年になって、祖父が外国航路の客船の船乗りだったことを知った。

 この絵はがきは、その昔、祖父がイタリアで買ったものだった。紀元1世紀にベズビオ山の噴火で埋もれた古代都市ポンペイの遺跡だったのである。

 のちにポンペイに行って遺跡も歩き、火山灰のなかから現れた遺体もこの目で見たが、幼いころの衝撃が強すぎたせいか、意外にそうした遺体の前は淡々と通り過ぎてしまった。それよりも、紀元1世紀の南部イタリアの人たちが、われわれと同じような暮らしを営んでいたことの方に、感銘を覚えたからに違いない。

   □    □

 過去が歴史と呼ばれるようになると、ものもそれなりに変容する。さらにどんどん年を重ねれば朽ちてゆく。そうした無常観を先日、神戸市灘区のBBプラザ美術館( http://bbpmuseum.jp/ )で味わった。

 「神戸からの時空 アートの旅人たち」展で掛けられた2枚の絵画で、1枚は同館が所蔵するルノワールの「薔薇(ばら)をつけた少女」。もう1枚は柴川敏之(51)の「出現II40041121(2000年後に発掘された絵画の出土品:ルノワール)」。

 その二つの作品が並んで飾ってあるところがミソといっていい。

 左から右へ視線を移したとき、ルノワールの描いたこの愛らしい少女像も、いつかはこうしてぼろぼろになってゆくのだろうなあ、との思いをはせずにはいられなくなるのである。

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