産経WEST

【通崎好みつれづれ】信州の老舗バー、息づく昭和

産経WEST 産経WEST

記事詳細

更新

【通崎好みつれづれ】
信州の老舗バー、息づく昭和

「アドニス」の店内とママの福嶋美恵子さん=長野県伊那市 「アドニス」の店内とママの福嶋美恵子さん=長野県伊那市

 先月演奏会で長野県伊那市を訪れた際、来年創業60年を迎えるバーを見つけた。日本で洋酒文化が浸透し、盛んにバーが誕生し始めたのは昭和30年頃。そう思えば堂々老舗の部類である。店名は「アドニス」。朝の散歩で通りかかった。

 看板には「サントリーチェーン」とある。「洋酒の寿屋(サントリーの前身)チェーンバー制度」は、昭和31年に始まる。「トリスウイスキー」が一世を風靡(ふうび)し、さまざまなタイプの「トリスバー」が出現する中、より成熟した健全なバーにお墨付きを与えるシステムだった。

 アドニスの玄関はうっそうと木々に覆われ、独特の雰囲気を醸し出す。とはいえ、手入れが行き届いているので営業しているのだろう。演奏会後に訪れてみた。おそるおそる扉を開くと、カウンターの前にずらっと並んだボトルが目に入る。きっぷの良さそうな着物姿のママに促され、足を踏み入れた。

 昭和25年生まれのママ・福嶋美恵子さんは、大正14年生の父、昭和2年生の母が始めた店を20代から手伝い、結婚後も継続し今に至る。昨年亡くなられたお父さんは、かつて愛知県阿久比(あぐい)町で教員をしていた。ところが、家の跡継ぎが亡くなり伊那に呼び戻される。「人が集う場所もない」と、印刷所に勤めながら鬱々と過ごす中、都会ではバーが流行っているらしいと聞く。そこで一念発起し、昭和33年にアドニスを開業した。毎年贈られるサントリーチェーンバー「SCB」のイヤープレート。アドニスのそれは「KCB」、つまり「寿屋」時代から始まっているのがご自慢である。

続きを読む

このニュースの写真

  • 信州の老舗バー、息づく昭和
  • 信州の老舗バー、息づく昭和

「産経WEST」のランキング