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【夕焼けエッセー】背番号10

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【夕焼けエッセー】
背番号10

 中1の息子が、秋のブロック大会を前に背番号10をもらって帰ってきた。野球部なので当然9番までがスタメン。「おしかったなあ」の言葉をグッとのみ込み、「土曜日までに縫い付けたらいい?」と聞く。本人は「うん。補欠の中で一番やで!!」といたって嬉しそう。

 確かに、小5、小6の2年間、週1回の野球教室に通っていただけの彼が、リトルリーグでバリバリやっていたような子がたくさんいる20名の中から10番を勝ち取ったのは僥倖(ぎょうこう)である。

 ふと、「何で先生10番くれはったんやろな」と聞くと、「練習で一番声出してるからやって。だから僕、ランコー(ランナーコーチャー)やりたいねん。声でかいし、ぴったりやろ?」と言う。ランコーとは、一塁や三塁のそばにいて、大声でランナーに「回れ、回れ!!」と叫びつつ手を回す、あの人のことである。

 確かに適任ではあるが、1度ぐらい打席に立ってみたくはないのかと思い、「ええけど、1回ぐらい交代で出してもらえたら嬉しいよなぁ」と言うと、「いや、もしエラーしたら嫌やし、僕はランコーがええねん」と言い切る息子。

 異常にプライドが高いのか、それともただ気が弱いだけなのか。もんもんとしながら背番号を縫い付ける私。春、小学校の卒業式で「夢はプロ野球選手です」と胸を張っていた息子を思い出す。道のりはまだまだ遠そうやけど、失敗を恐れず頑張れ息子!!

 石原裕美子(48) ピアノ講師 大阪市阿倍野区

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