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【夕焼けエッセー】子きち

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【夕焼けエッセー】
子きち

 最近、亡くなった義父に主人が似てきた。

 まず、すり足で歩くとこ。

 「足、上がってないで。こけるよ」と注意しても聞く耳日曜日。

 それから、ボタボタと食べ物をこぼすとこ。

 お鍋の時は、毎回「取り皿を、お鍋のそばまで持って行って」と声をかける。

 これでは、近所の幼稚園児の方が優雅に食べているのではないかと思ってしまう。

 そして、究極の遺伝子は、きっちりと引き出しを閉められないとこ。

 もうちょっと押せば引き出しは閉まるのに、そのひと押しがない。

 だから、我が家の家具はあっちの引き出し、こっちの引き出しが、みなチョイ開き状態。

 この状態を、義父の部屋で発見した時は、驚きながらも笑ってしまった。

 それで、義父の名前が「正吉」だったので、主人の事を「子きち~」と呼んでやった。

 「似てへんわ! 子きちと呼ぶな」と主人に怒られたがおもしろくて何回も呼んでやった。

 ある日、鼻をすすりながら、おうどんを食べていたら「子すま~」と私を呼ぶではないか。

 私の亡くなった母の名前が「すまこ」だったのだ。

 ドヤ顔で主人が言う。

 「お義母さんも、よう鼻すすって、おうどん食べてたなあ」

 赤阪桂子(59) 自営業 奈良県香芝市

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