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【午後のつぶやき 大崎善生】日本一の駒師の「ばかな生き方」

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【午後のつぶやき 大崎善生】
日本一の駒師の「ばかな生き方」

 児玉龍兒(りゅうじ)とは20代からの飲み友達である。児玉龍兒とは何者かというと、今や日本を代表する駒師である。押しも押されもせぬ、将棋駒製作の巨匠といっていい。私がまだ将棋連盟に入りたてでぺいぺいの編集者だった頃、山形から来た20歳そこそこの児玉に会った。駒師と紹介されたが、私の目には何だかそう見えず、山形から出てきた右も左もわからない兄ちゃんが大都会・東京でキョロキョロしている、そんな感じだった。

 酒を飲めば結構、強い。もちろん1回飲んだだけですぐに仲良くなった。それ以来、東京に来るたびに必ず飲んだ。何かの用で私が山形に行ったときも飲んだ。

 彼は相撲でいえば今話題の貴乃花親方のようなタイプで、他の職人とは接しないし、業界に迎合しない。結果、木の仕入れ、製作から販売まですべての道を自分で切り開くしかなく、それを実践した。そして腕を磨き少しずつ、自分の居場所を切り広げていった。

 「なぜそんなばかな生き方をするんだ」と今年、久しぶりに会った児玉に言うと「何、言っているんですか、大崎さんにそうしろと言われたからですよ」と真顔で返された。20代の何も分からない若造だった私が酔った勢いで言い放った言葉が、彼の胸に突き刺さり何かを動かした。

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