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【夕焼けエッセー】ニャンてこと、毛頭ありえへんで

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【夕焼けエッセー】
ニャンてこと、毛頭ありえへんで

 向かいの家に住む小学校1年生の坊やは、とても話し好きな性格で、なぜか私のことを「おっちゃん」とか「じいちゃん」ではなく「山田さん」と呼びかけながら、ほぼ毎日、話しかけてくる。今年4月から新しい生活が始まり、その印象がまだまだ新鮮なためか、学校生活に関する話題が多くなった。

 ところが、先日「山田さんは、頭のてっぺんには毛がないのに、その周りにはたくさん生えてるのはなぜ?」と尋ねてきた。

 このときは、やはり近所に住む同級生の女の子と一緒で、その子がそっと「そんな話はせん方がええで」と彼にささやきかける「おまけ」までついていた。

 私に呼びかける大人びた言葉遣いと裏腹に、質問の内容の子供らしさ、それに、その質問をやんわり否定する女の子の配慮する感情に接し、心の中は、乱気流に突入した飛行機に乗り合わせ機体が上下に揺れ動く気分ながら、2人の小学生が発する言葉の滑稽(こっけい)さに、心の中で思いっきり笑ってしまった。

 「あのな、山田さんちの猫、全身がモコモコやろ。あの猫は常日頃から、毛をたくさん蓄(たくわ)えんとあかんねん。それで山田さんが寝ている間に寝床にやってきて、頭のてっぺんの毛をなめ回してるんでな、自然とこんな頭になってしもうてん」と、口から出まかせの説明をすると、2人の小学生は意外にも納得してしまった。

 小さい子に嘘教えたらあかんけど、今日の話は「緊急避難」ということで、許してもらえるかな。2人がもう少し大きくなれば、真相に気づき、あのときの山田さんの説明は毛頭ありえないことだったとわかってくれるやろ。

山田 定男(70) 大阪府岸和田市

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