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【水中考古学へのいざない(17)】海賊の海に沈んだオランダ商船の謎 積み荷満載、自衛の大砲も

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【水中考古学へのいざない(17)】
海賊の海に沈んだオランダ商船の謎 積み荷満載、自衛の大砲も

モンテ・クリスティに沈む船から回収されたたばこパイプ(ジェローム・ホール氏提供) モンテ・クリスティに沈む船から回収されたたばこパイプ(ジェローム・ホール氏提供)

 †銀貨が裏付け

 20枚のレアル銀貨(スペイン古銭)も見つかった。中でもペルー鋳造の8レアル銀貨には、額面を8から6レアルに切り下げる刻印があった。スペイン造幣局が1649~51年の間にペルーで通貨切り下げを断行しており、1枚の銀貨がいみじくもスペイン帝国の経済事情をうかがわせた。これらの銀貨から、船が沈んだのは1651年以降と推測される。

 ライン川流域産の奇妙な「ヒゲ面の顔飾り」をもつ壺もあった。17世紀のオランダ船には、オイルやアルコールのような液体を入れる容器として積まれていた。「知」のビジュアル百科『海賊事典』(あすなろ書房)によると、船に積んだ飲料水は適当な保存方法がなく、すぐに腐って飲めなくなってしまう。船乗りたちは水よりもビールを好んだため、ビール壺として積まれたともいう。

 アムステルダムにあるオランダ年輪年代学センターの分析によれば、船体材には英国の樫材が使われている。イギリスの造りではあるが、船の積み荷がニューヨーク北部地方、特にオランダ人入植地であるオレンジフォートのものと一致することから、どうやらオランダ商船だったようだ。

 17世紀初めには、ドミニカ北部沿岸の島々は野蛮な海賊たちが占拠していた。沈没船から発見された大砲や刀剣類は、それらの略奪から身を守る武装商船だったことを物語っているが、沈没の原因は海賊に襲われたものと聞く。たばこパイプを満載したこの船は、船名も不明。そもそもどこへ行くつもりだったのか、謎は多い。             (水中考古学者 井上たかひこ)

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