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【午後のつぶやき 大崎善生】私の知らないところで進化していた「ジンギスカン」…しかし何か物足りない、記憶は煙の中に

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【午後のつぶやき 大崎善生】
私の知らないところで進化していた「ジンギスカン」…しかし何か物足りない、記憶は煙の中に

 一昔前まではジンギスカン屋ではどこでも出された冷凍した丸い肉、ジンギスカン鍋の山頂部分にたっぷりラードを乗せ、もやしを敷き詰めてその上にびっしりと肉を並べる。煙が立ち上りすごいことになる。それが私にとっての、ザ・ジンギスカン。着ている服に染み付く匂いのことなど考えていられない。

 東京・中野にある人気店「ジンギスカン ゆきだるま」を雑誌の取材で訪ねてみたことがある。札幌の名店「雪だるま」とは名前は同じだが無関係だそう。今流行の生ラムの店で、大変においしい。肉はアイスランドから輸入しているというから、ジンギスカンも私の知らないところで進化しているのである。

 しかし何か物足りない。ガツンとくるあの匂いがない。遠い少年の日、凍えつくような札幌の台所で、兄と煙に包まれて食べたあの味。ジンギスカンは私にとって少年時代の幸せな思い出を、一緒に食べているようなものなのだ。しかし当然のことながら、それが戻ってくることはない。          (作家)

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