産経WEST

【夕焼けエッセー】麗しき夫婦愛?

産経WEST 産経WEST

記事詳細

更新

【夕焼けエッセー】
麗しき夫婦愛?

 法事のため、夫と京都に出かけた帰りのこと。電車を降り暗い道の途中に、ギリギリ2人が並んで通れる小さな踏切がある。そこを渡りかけた途端、警報機が鳴り出し、あわてて駆けだして、折れた車止めの1本につまずいてバタンと転倒。左肘をしたたかに打ちつけ、強烈な痛みに骨折かなと心配しつつ診察日を待つ。

 レントゲンの結果は、肘骨折で手術が必要とのこと。紹介された病院で即入院。全身麻酔の予定が急遽(きゅうきょ)腕の付け根をきつく縛っての部分麻酔となる。手術台で、締め付けた腕の痛みと恐怖にひたすら耐える長い時間。その夜は腫(は)れ上がった腕の痛みでまんじりともできず。

 口にも頭にも届かない不自由な腕でリハビリに入る。担当の若い女性が子供さんのことなどユーモラスな話に引き込み、リハビリの痛みを軽くしてくれる。事故の様子を知った彼女が、「奥さんとご主人のどちらがけがした方がよかったと思います?」と聞いてきた。

 「もちろん私の方」と即答した私に「麗(うるわ)しい夫婦愛ですね。私なら突き飛ばしても倒れまいとするのに」と笑わせる。まるでわが身をていして夫をかばったような美談にされてしまった。ホントは、急には人に任せられない仕事を持つ夫が休むとどうにもならない、という現実的な思いからだったのだが。まあいいか。

 私の“犠牲”で、くっきり目立つ黄色い車止めもできて、後ろに続くけが人がなくなったかも。とはいえ、私のようなオッチョコチョイはそうそういないだろうけれど。

山崎 寿子(72) 主婦 奈良県御所市

「産経WEST」のランキング