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【夕焼けエッセー】夏の思い出

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【夕焼けエッセー】
夏の思い出

 子供が外で遊ぶ姿を見かけることが少なくなりました。私が小学校高学年だった頃は、子供の数も多く、集団遊びが全盛でした。

 夏休みの夕方4時ともなると、あちこちから男の子が神社境内に集まり、ソフトボールに興じたものです。狭い境内でのルールは、独特のものでした。

 1塁側にある社務所屋根、3塁側にある本殿の屋根を越えればホームラン。建物にボールが当たったのや屋根を転がるボールをノーバウンドで捕れば、アウト。2塁側には建物がないため、山の斜面で守っていたことも思い出されます。

 それに、ファウルは3回続けるとアウトになりました。なにしろ神社は平地より10メートル以上は高い所にあるものですから、ファウルボールを探すのは大変なことでした。急峻(きゅうしゅん)な崖(がけ)を上り下りして、生い茂る草木の中から小さなボールを探す羽目になってしまうのです。野球よりボール探しの時間が長いこともしばしば。探し当てた者はホームランを打った者同様にヒーロー扱いをされたものです。

 バットなどの高価なものは誰も持っていません。竹バットです。ベースは廃瓦で代用したものです。最近の少年野球や甲子園球児のプロ顔負けの用具を見るにつけ隔世(かくせい)の感を覚えます。

 この仲間が、成人になり「農協杯ソフトボール大会」に出場したときのことです。わがチームは妙にフライを上げてアウトになることが多いのです。それはどうも少年野球時代に原因があったように思います。神社社務所や本殿越えのホームランを狙う打撃の癖、すなわちアッパースイングが直っていなかったのです。試合が終わるたびに、大笑いしたものです。

 昭和30年代後半の片田舎での話です。

土井 修二(66) 農業 福井県越前市

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