産経WEST

【昭和クルマ列伝】早すぎた名車「アコード・エアロデッキ」 ワゴンのようでクーペ

産経WEST 産経WEST

記事詳細

更新

【昭和クルマ列伝】
早すぎた名車「アコード・エアロデッキ」 ワゴンのようでクーペ

 長いルーフから緩やかに下がる流麗なライン。後端をスパッと切り落としたバックスタイル。リアハッチは荷室後部の屋根まで回り込むガルウイング式。ワゴンのようでクーペ風。こんなデザインはこれまでの日本車になかった。

 「アコード・エアロデッキ」は1985(昭和60)年6月、ホンダの主力セダン「アコード」の派生車として登場。大柄な2000ccクラスなのに2ドアと割り切ったことでパーソナル感が強まり、荷物スペースは広大となった。かつて欧州車に見られたシューティングブレークという趣味性の高い狩猟専用のワゴンが発想の原点という。

 エアロデッキはホンダらしくメカニズムも先進性に富む。高性能モデルには160馬力の16バルブDOHCエンジンを搭載、サスペンションはFF車で世界初となる4輪ダブルウィッシュボーンを採用した。精(せい)悍(かん)なリトラクタブルヘッドライトがワイド&ローのフォルムを引き立てた。

 エアロデッキが登場した1980年代はホンダが勢いに乗っていた時代。「シティ」や「プレリュード」などの新型車が次々とヒットし、「レジェンド」で上級車クラスへ参入、「トゥディ」で軽自動車市場に復帰した。米国での現地生産も軌道に乗り、F1では復帰後4年連続でタイトルを獲得した。

 当然、エアロデッキもホンダ躍進の担い手になるはずだった。2年前に発売された1500ccクラスの「ワンダー・シビック」が似たようなリアデザインでヒットしたため、勝算もあった。

 だが、80年代はまだセダンが全盛で、ワゴンは商用車のイメージが根強い。一般ユーザーからは「中途半端」と敬遠され、販売は伸び悩む。エアロデッキはカー・オブ・ザ・イヤーも受賞するなどジャーナリストの評判はすこぶる高かったが、一代限りで市場から姿を消した。

 販売終了の89年は皮肉にもワゴンブームの先駆けとなったスバル「レガシィ・ツーリングワゴン」が登場している。ホンダファンからは「世に出るのが早すぎた」と惜しまれた。

 そんな声に押されるように、ホンダはワゴンモデルの新型車にエアロデッキ風デザインを踏襲していった。

 4ドアワゴン「アヴァンシア」(99年)は低く構えたスタイルやコンセプトからエアロデッキの再来と言われた。ミニバン「ジェイド」(2015年)のリアデザインにも“名残”が見られる。

 エアロデッキ登場から30年余、今や世界中がSUV(スポーツ用多目的車)ブームに沸いている。エアロデッキが80年代に切り開いたデザインには未来を見据えた先進性が隠されていた。(中村正純)

このニュースの写真

  • 早すぎた名車「アコード・エアロデッキ」 ワゴンのようでクーペ

「産経WEST」のランキング