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「攻めの防災を」南海トラフ・首都直下地震対策に登山家の野口健さんら提言 熊本地震のテント村支援の経験から

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「攻めの防災を」南海トラフ・首都直下地震対策に登山家の野口健さんら提言 熊本地震のテント村支援の経験から

 昨年4月の熊本地震の被災地でテント村避難所を開設し、571人の被災者をケアした登山家の野口健さんと岡山県総社(そうじゃ)市はその経験を新しい避難システムとして発展させ、首都直下、南海トラフ地震対策に取り組もうとしている。野口さんと片岡聡一市長に意義と今後の展開を聞いた。 (編集委員 北村理)

 --テント村の支援を考えた理由は?

 野口 車中泊避難によるエコノミークラス症候群(運動・水分不足等で生じた血栓が肺動脈をふさぎ突然死を招く)を知った時、テントはプライバシーが確保でき、足を伸ばせるので、リラックスできると考えました。エベレストでは、安全に登るためベースキャンプで心身共に快適に過ごすことを心がけます。避難生活は元の生活に戻るステップです。避難生活とベースキャンプの考え方は似ていると思いました。

 片岡 熊本では震度7が続き、屋内避難所は不安でした。首都直下や南海トラフ地震でも同様の状況が想定されます。テントは安全な場所を選べば、すぐ設置できます。

 野口 実際、地震から10日後にはテント村を開設できました。

 片岡 総社市は地震の翌日から益城(ましき)町で物資・医療支援を行いましたので、野口さんから相談があってすぐ益城町とテント村の場所を決めました。

 野口 テントは156張を設置、最高時156世帯、571人が利用し、閉村後もご自宅で使用していた方はいました。

 --なぜ迅速な支援が可能だったのか?

 野口 熊本地震の1年前のネパール地震も余震が続き、屋内は危険だったので、テントを支援し、役立つと感じていました。

 片岡 東日本大震災の教訓から「大規模災害被災地支援に関する条例」を設けました。市長権限で即座に支援ができるという条例で、予算は年間1000万円です。自治体による支援は被災地の自治体の要請で行われます。しかし、自治体自身が被害を受けた場合、支援要請する余裕はありません。それなら、支援する自治体が自主的に、一刻でも早く被災地に向かい、被災者を救うことが現実的だと考えたのです。

 野口 テント村を設置する際、公平性が問題になりました。車中泊していた全員がテント村に入れないと設置は認められないという現地の意見でした。しかし、車中泊の影響で亡くなる人(今年4月現在、車中泊経験者の死者数41人)が増えるのは目に見えていたので、急いだのです。

 片岡 行政にとって公平性を担保するのは大切です。しかし、それは平時のことです。非常時は、少しでもはやく、ひとりでも多くの人の命を救おうという判断が必要です。

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