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【午後のつぶやき 大崎善生】ハンマーでも砕けない誇り 極悪非道「名古屋闇サイト事件」から10年、被害者の母を取材して

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【午後のつぶやき 大崎善生】
ハンマーでも砕けない誇り 極悪非道「名古屋闇サイト事件」から10年、被害者の母を取材して

 8月25日に名古屋に行ってきた。この日は磯谷利恵さんの10年目の命日で、角川書店の編集者と3人でお線香を上げにいった。利恵さんは「名古屋闇サイト事件」という、まれに見る凶悪犯罪の被害者であり、私は事件を題材にして「いつかの夏」というノンフィクションを書いた。利恵さんの母、磯谷富美子さんとはその取材のときから3年のお付き合いになる。

 利恵さんが1歳のときに夫を病気で失った富美子さんは、事務員として勤めながら母の手ひとつで娘を育ててきた。その娘も大きく成長し、待望の恋人もできた。囲碁を趣味にし、カフェを中心に多くの友人もできた。そんな31歳の女性が、10年前の8月24日の夜、家まであと1分という路上で、インターネットの闇サイトで出会ったという3人の男に車で拉致される。「女でも拉致して強盗でもしませんか」「ああ、それはいいですね」「やりましょう、やりましょう」。そんなやりとり。

 ワゴン車の中に閉じ込められ、手錠で動きを封じられた利恵さんは、男3人から暴力を受け、持っていたキャッシュカードの暗証番号を問い詰められる。刃物を突きつけられ、「刺すからな」とカウントダウンまでされ、がくがくと震える体で、答えたのは偽りの暗証番号「2960」。そこには預金800万円が入っていた。自分を一人で育ててくれた大好きな母に、家を買ってあげたい。その夢のためにこつこつと必死で貯めてきたお金。こんなやつらに渡すわけにはいかなかった。

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