産経WEST

【坂口至徳の科学の現場を歩く】膵臓で分泌、難病の治療薬に…神経を修復する物質の仕組み解明 阪大、多発性硬化症など

産経WEST 産経WEST

記事詳細

更新

【坂口至徳の科学の現場を歩く】
膵臓で分泌、難病の治療薬に…神経を修復する物質の仕組み解明 阪大、多発性硬化症など

膵臓(すいぞう)から分泌されるFGF21は、神経細胞の髄鞘が脱落した部位に到達すると、髄鞘の形成に関わるオリゴデンドロ前駆細胞を増殖させることにより、髄鞘が修復される(村松里衣子大阪大学准教授提供) 膵臓(すいぞう)から分泌されるFGF21は、神経細胞の髄鞘が脱落した部位に到達すると、髄鞘の形成に関わるオリゴデンドロ前駆細胞を増殖させることにより、髄鞘が修復される(村松里衣子大阪大学准教授提供)

 脳や脊髄にある神経細胞は、軸索という細長い突起を持っている。これによって神経細胞同士の回路がつながり、その中を電気信号が流れて刺激を伝える。この基本的な仕組みが素早く働くのは、電線を覆う絶縁体のような役目をする髄鞘が軸索を包んでいるためで、何らかの原因で髄鞘が脱落すると、神経回路の機能が障害される。ところが、時には自然に修復されることもあり、その仕組みがわかれば神経の病気の治療につながると盛んに研究が行われている。

 そこで、大阪大学大学院医学系研究科の村松里衣子准教授、山下俊英教授らの研究グループは、膵臓(すいぞう)から分泌される特定のタンパク質が神経回路を修復することを突き止めた。脳や脊髄の外部にある臓器で作られていたことは、これまでの研究の常識を覆す成果。髄鞘の脱落により起きる難病の多発性硬化症などの治療につながると期待される。

 研究グループがマウスの実験から、髄鞘を修復するタンパク質として同定したのは、線維芽細胞増殖因子(FGF)21と呼ばれているホルモンに似た作用がある物質。血液中に含まれ、膵臓でつくられていることがわかった。

 その機能を調べる実験では、FGF21をつくれないマウスと正常のマウスの双方の神経回路を傷害し、その影響を比較したところ、FGF21を欠いたマウスの方が大幅に髄鞘の脱落が起きていた。さらに、髄鞘が脱落して起きる後肢の機能の障害として「足を踏み外す」という状態があり、その改善について比べたところ、14日目で改善したマウスの割合の差が12%あり、FGF21欠損のマウスでは、修復が抑制されていることが明らかになった。

続きを読む

関連ニュース

「産経WEST」のランキング