産経WEST

【正木利和のスポカル】「奇想」がはやる美術界

産経WEST 産経WEST

記事詳細

更新

【正木利和のスポカル】
「奇想」がはやる美術界

雪村「呂洞賓図」重要文化財 大和文華館蔵 雪村「呂洞賓図」重要文化財 大和文華館蔵

 とにかく、「奇想」なのである。

 きそう【奇想】普通には思いつかない、変わった考え。奇抜な着想。

 小学館の「大辞泉」をひくと、こうある。

 何が「奇想」なのかというと、近ごろはやりの「美術展」の傾向のことだ。

 日本でヒットする美術展といえば、モネやルノワールといった印象派、あるいはゴッホ、セザンヌなどのポスト印象派といったところが即座に浮かぶ。

 実際、昨年の首位は66万人余りが入った国立新美術館のルノワール展だったし、一昨年は76万人余りを集客した東京都美術館のモネ展がナンバーワンだった。

 また、日本人がブランドに弱いせいかもしれないが、ルーヴルやオルセー、プラドといった世界でも有名な美術館の名前を冠した美術展であればよく入る。

 日本画では、この春に京都国立博物館で開催された海北友松(かいほうゆうしょう)展が16万人を超える人を集めるなど、室町から桃山、江戸初にかけての著名な絵師が話題を呼ぶ傾向にある。

 「鳥獣戯画」など著名な国宝をメーンにした展示、また著名な寺の寺宝なども大勢の鑑賞者を集めてきた。

 しかし、近ごろ、そうした「本筋」ばかりでは飽き足らなくなったせいか、ちょっとした「脇道」のほうが人気を集めている。

 それが、「奇想」というキーワードでくくられる作品たちだ。

   □    □

 美術界で「奇想」といえば、著書「奇想の系譜」で知られる美術史家で東大名誉教授の辻惟雄(のぶお)氏(85)を思い出す人も多いのではないか。

 日本美術のなかの江戸期の画家、岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲といった、それまでの日本絵画のなかで傍流とみなされてきた画家たちに注目し、1960年代後半に彼らのいきざまと作品を論評した辻氏は、まさに埋もれていた宝を掘出した人物といっていい。

 辻氏の「奇想」は、因習を打ち破る「自由で斬新な発想」を意味する。

 江戸期絵画の保守本流だった狩野派、あるいは円山四条派などから逸脱した又兵衛や曾我蕭白(しょうはく)、歌川国芳のような目をそむけたくなるようなグロテスクな絵画、山雪や若冲のようなめくるめく幻想の世界に誘うような絵画に着目し、そこに光を浴びせたのであるが、そのインパクトが時代にマッチしたのだろうか、ちかごろ日本の奇想の画家たちの作品を集めた展覧会が増えてきた。

続きを読む

このニュースの写真

  • 「奇想」がはやる美術界

関連ニュース

「産経WEST」のランキング