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【鹿間孝一のなにわ逍遙】“伝説”に彩られた「どケチ人生」

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【鹿間孝一のなにわ逍遙】
“伝説”に彩られた「どケチ人生」

大阪マルビル会長の吉本晴彦さん=平成14(2002)年 大阪マルビル会長の吉本晴彦さん=平成14(2002)年

 元禄時代のベストセラーである井原西鶴の「日本永代蔵」は大阪商人のバイブルである。

 商売の心得として「始末」「算用」「才覚」「信用」を紹介しているが、なかでも始末が大阪らしい。

 始末とは「始」と「末」、すなわち始めと終わりのことで、商売には帳尻を合わせる一貫した計画性が必要である。そのために無駄を省く合理性、質素と倹約の精神がなければならないと説く。

 それを実践したのが吉本晴彦さんである。

 記者になったころ、すでに「ケチ本さん」の名で知られる有名人だった。残念ながら、お目にかかる機会はなかったが、先輩記者から逸話をよく聞かされた。

     ◇

 有名なのは、「大阪の3ケチ」と称された森下仁丹の森下泰さん、サントリーの鳥井道夫さんとの“タクシー伝説”である。

 3人がタクシーに乗ろうとすると、先に助手席に座ろうと争う。助手席を奪われると、後部座席には後から乗ろうと譲り合う。とにかく先に降りて料金を払わずにすまそうというのである。で、なかなかタクシーが発車できない。

 この話、吉本さん自身が吹聴していたようだが、ホンマやろかと疑う。そもそも有名企業の経営者である3人が1台のタクシーに乗るというのが想像できない。ケチぶりを自慢するための作り話ではないかを思う。

 ただ、取材に行った記者が吉本さんからタバコをねだられたというのは本当らしい。

     ◇

 「ケチとシブチンは違う。ケチのケは経済のケ、チは知恵のチで、つまり経知と書いてケチと読む。ケチは無駄な金(死に金)は使わないが、生き金は惜しみなく出す。シブチンはどんな金も出さない」

 金銭哲学をまとめて昭和45(1970)年に出版した「どケチ人生」はたちまちベストセラーになった。この本を教典として、「大日本どケチ教」の教祖を名乗った。

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