産経WEST

【坂口至徳の科学の現場を歩く】遺伝を担う生命維持に必須の酵素、立体構造を解明 理研、がん・ウイルス感染症の治療に期待

産経WEST 産経WEST

記事詳細

更新

【坂口至徳の科学の現場を歩く】
遺伝を担う生命維持に必須の酵素、立体構造を解明 理研、がん・ウイルス感染症の治療に期待

RNAポリメラーゼⅡ(PolⅡ)は転写が開始した段階では転写開始因子(基本転写因子)が結合している(図左)。転写が進み、RNAが伸長する段階になると、4種類の転写伸長因子(Elf1、TFHS、Spt4、Spt5)が結合して立体構造が激変(図右)。DNAを導入し、送出するトンネル(通路)、RNAを送出するトンネルが独立して形成され、効率的に転写が行われる(理化学研究所提供) RNAポリメラーゼⅡ(PolⅡ)は転写が開始した段階では転写開始因子(基本転写因子)が結合している(図左)。転写が進み、RNAが伸長する段階になると、4種類の転写伸長因子(Elf1、TFHS、Spt4、Spt5)が結合して立体構造が激変(図右)。DNAを導入し、送出するトンネル(通路)、RNAを送出するトンネルが独立して形成され、効率的に転写が行われる(理化学研究所提供)

 生命体を形づくり、機能を持たせるための設計図になる遺伝情報は、細胞の核の中のDNAという長い分子に含まれる4種類の塩基が並ぶ順番(配列)によって文字のように記されている。遺伝子が働くときには、遺伝情報を示す特定の範囲の塩基配列がメッセンジャーRNA(mRNA)という分子にコピー(転写)されて核の外に運び出され、それをもとに細胞内の小器官でタンパク質をつくり出す。

 このような生命の基本的なシステムの最初の段階でmRNAの転写を担う「RNAポリメラーゼII」という生物に必須の酵素について、その酵素が働いている状態の立体構造を解明することに理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センターの関根俊一チームリーダー、江原晴彦研究員らの共同研究チームが成功した。

■巨大タンパク質の複合体の姿が明らかに

 この酵素はがんやウイルス感染症の治療の標的になっているが、機能するときに巨大なタンパク質複合体を形成するので解析が困難だっただけに、新たな治療法の開発や創薬に結びつきそうだ。この研究成果は9月1日付の米科学誌「サイエンス」に掲載されるのに先立ち、オンライン版で公開された。

 RNAポリメラーゼIIの立体構造は、2002年に米国のロジャー・コーンバーグ博士らが、X線結晶構造解析という手法で解明した。この酵素は分子量約50万の大きなタンパク質の複合体だが、細胞内で働くときには、転写を制御する因子など多数のタンパク質と結合し、さらに巨大な複合体を形作るので、その状態での詳細な構造解析は困難だった。

続きを読む

関連ニュース

「産経WEST」のランキング